FDAが抗肥満剤オルリスタットについてグレー情報を早期に公開
2009-09-24
(キーワード: FDA、グレー情報の早期公開、抗肥満剤オルリスタット、肝障害)
FDA再生法により、FDA(米国食品医薬品庁)は安全性について精査中の医薬品を公表するようになった(グレー情報の早期公開)。2009年8月24日、FDAは抗肥満剤オルリスタット(Orlistat)の肝臓障害の有害事象を精査中と発表した。オルリスタットは世界100か国以上で販売承認されており、米国ではスイッチOTCが承認され一般用医薬品としても販売されている。日本でもインターネットで「個人輸入」され用いられている。
以下にFDAの発表(※1-※3) を要約する。
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FDAは医療専門家と患者のみなさんに、オルリスタットを服用した患者での肝障害の有害事象報告を精査していることをお知らせする。
オルリスタットは、米国で処方せん薬ゼニカル(Xenical)、OTC薬(一般用医薬品)アリ(Alli)として販売されている。1999年から2008年10月の間に、FDAの自発的有害事象報告システム(AERS)に32例の重篤な肝障害の有害事象が報告され、そのうち6例は肝不全であった。この32例でしばしば見られたのは黄疸、虚弱、腹部痛などであった。32例のうち27例は入院したと報告されている。32例のうち30例が米国以外からの報告である。
FDAはオルリスタットの製造企業から提出された肝障害の疑いのある他の症例を精査中である。分析は進行中で、現段階ではオルリスタットの服用と肝障害との決定的な関係について言える段階ではない。
FDAはオルリスタットの処方や服用をやめるようアドバイスするものではない。
オルリスタットを服用して肝障害の可能性のある症状を経験した方は、医療専門家に相談いただきたい。主な症状は虚弱ないし疲労・発熱・黄疸・褐色尿であり、他には腹部痛・悪心・吐き気・色が薄い大便・かゆみ・食欲喪失などが含まれる可能性がある。
FDAは医療専門家や患者のみなさんに、オルリスタット服用時の有害事象をメドウォッチ(MedWatch) 自発的有害事象報告システムに報告してくださるようお願いする。
精査中の段階での情報公開(早期のリスクコミュニケーション)は、FDAのリスクコミュニケーション・ツール(手段)の1つである。FDAは検討が終り次第オルリスタットについての見解を発表する。
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因果関係が疑われるが確定していない早い段階で、FDAが安全性を精査中の情報を公開し、関連情報のFDAへの集中を医療専門家・患者市民などに求める「グレー情報の早期公開」は、医薬品の安全性管理のうえで意義が大きい。厚労省の「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」が日本の医薬品安全性行政への導入を求めているが、早い時期での実現が切望される。 (T)