米国老年医学会「高齢者の疼痛治療カイドライン」を改訂
2009-09-24
（キーワード：米国老年医学会、疼痛治療、非ステロイド抗炎症剤、日本老年医学会、 NSAIDs 、 AGS）
米国老年医学会（AGS）は2009年5月に、疼痛治療に関するガイドラインを改定した。新ガイドラインでは、これまでのガイドラインを否定し、非ステロイド性抗炎症剤（註1）は避けるようにとしている。米国医師会誌（JAMA）2009年7月１日号はMedical News&Perspectiveでとりあげており、以下に紹介する。
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新ガイドラインでは2002年のガイドラインを否定し、非ステロイド抗炎症剤（NSAIDs）の使用は“限られた人に対して、極めて注意深く行うべきで、通常は考えるべきではない”と述べている。アセトアミノフェンは第一選択薬として改訂前の位置に止まっているが、慢性疼痛のある高齢者にはオピオイド（註2）を考慮することを推奨している。
ガイドライン作成委員長のB.Ferrell氏によれば、今回の改訂は2002年頃から報告され始めた、NSAIDsに関連した重篤な心血管系と消化管系のリスクを反映させたものである。Ferrell氏は“多くの場合、NSAIDsはオピオイドよりもリスクが大きい”と言い、オピオイドの使用に尻込みしている医師がいることについて、新ガイドラインではその使用法に関してアドバイスしている。
米国老年医学会によれば、慢性疼痛は老人によくあることだが、背骨の変型、リウマチ、ガンの痛みなど十分に治療されていないことが多いという。多くの疾患を持ち複数の薬を服用しているかもしれない高齢者に、適切な鎮痛薬を選択するには細心の注意が必要である。高齢者の慢性疼痛の治療には、実際には個々人によってちがった方法が必要になるので、患者のこれまでの経験と薬のリスク/ベネフィットを考え、何がよいか決めなければいけない。
多数の医学関係の学会に審査を受けたという新ガイドラインは、エビデンスの記述も含めて、2009年後半には、米国老年医学会から出版される。
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どのようなエビデンスに基づいて改訂されたのか、JAMA誌には具体的には述べられていないが、このような選択がなされた背景には、COX-�兇料�択的阻害剤として華々しく登場したロフェコキシブ（商品名バイオックス）の問題があると思われる。ロフェコキシブは、心筋梗塞など心血管系の重篤な副作用が明らかになり、4000件にのぼる訴訟が起こされ、2004年には自主回収となった。
日本老年医学会のHPには、「高齢者に対して特に慎重な投与を要する薬物リスト」がある※3）。インドメタシン、ナプロキセン、ピロキシカム、ジクロフェナックなどのNSAIDsは慎重使用の対象薬物として掲載されている一方で、COX-�響�択的阻害剤はこれらの薬剤の代替薬としてむしろ使用が推奨されている。少なくとも、COX-�響�択的阻害剤の使用は再検討が必要であろう。（ST）
註１） 非ステロイド抗炎症剤（NSAIDs：アスピリン、インドメタシン、イブプロフェン、ピロキシカム、ジクロフェナックなど）は、シクロオキシゲナ-ゼI、�供�COX-I、 COX-�供砲鯀乏欧垢襪海箸砲茲辰董�抗炎症、解熱、鎮痛作用を現すと言われている。近年は、COX-�響�択的阻害剤（ロフェコキシブ、セレコキシブなど）が開発され、毒性が少ないNSAIDsと宣伝されたが、致命的な心筋梗塞などが起こることが報告されている。
註2） “オピオイド(opioid)”はアヘン様(opium-like)の意で、薬理学上の薬剤の分類名である。アヘンの主成分であるモルヒネやコデイン、またその誘導体や類似の作用薬が含まれるが、多くが麻薬である（“麻薬”は法律上の名称で、麻酔作用を持ち、常用すると習慣性となり中毒症状を起こす物質の総称。嗜好的乱用は大きな害があるので法律で規制）。中枢神経に作用し強力な鎮痛作用を有する。2009年2月FDAは、長期作用型のオピオイドに対して、リスクマネジメントのためのREMSを課した。
