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患者・市民への医薬品リスク/ベネフィットの伝達に1ページの試験結果要約シートが有効

2009-06-23

(キーワード: ランダム化比較試験成績、患者・市民、コミュニケーション、ボックスシート)

 米国では、製薬企業が患者・市民への処方せん薬の直接広告(DTC)を行うことができ、DTCには食品医薬品庁(FDA)の年間総予算の2倍もの巨費が投じられている。しかし、DTCでは医薬品のリスク・ベネフィットの本当の姿について患者・市民に不十分な情報しか提供されていない。
 米国政府の一員でもあるSchwartzらはそうした状況を、実際にFDAが承認して用いられているDTC広告のなかの医薬品情報を、占めるスペースは等しい要点を押さえた情報と取り換えることで改善したいと考えた。彼らは、医薬品のランダム化比較試験(RCT)の成績を簡潔に見やすく要約したボックスシートをとりいれた。そして、このことは、患者が医薬品のリスク・ベネフィットの本当の姿についてより良く理解できるようになることを、米国市民を対象とした「ランダム化比較試験」を行うことで示した。Annals of Internal Medicine誌2009年4月21号に掲載されている(※1)。
 2つの「ランダム化比較試験」が行われた。ひとつは症状を改善する医薬品の代表として、胸やけに用いられるPPI(プロトンポンプインヒビター)とH2ブロッカーについてのものである。もう1つは予防効果を示す医薬品の代表として、心臓発作や死亡を2次予防するクロピドグレルとスタチンについてのものである。
 それぞれの「ランダム化比較試験」で、2群に割りつけられた市民は、1ページ目は同じカラフルなDTC広告で、2ページ目は細かな字でぎっしりと書かれたFDAがDTCに承認している医薬品情報か、または有効性・安全性について医薬品のランダム化比較試験成績を見やすくまとめたボックスシート情報のいずれかを郵送で受け取り(図、リンクで添付の図を入れる)、質問に答えるという形の試験である。結果はいずれも、ボックスシートを見た患者の理解が大きく上回る結果であった。
同号に掲載された関連論説(※2)でJerry Avorn氏は、患者教育は政府のやるべきことでないとして民間セクターに委ねたレーガン政権以来のやり方でなく、FDA自身が患者・市民への医薬品情報提供に取り組む必要性を強調している。
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 多忙な医師が、医薬品のランダム化比較試験成績などの原典に当たって調べるのは容易でない。また、患者・市民にとっては原典の論文を読むのは容易でない。ここに、それぞれを対象にした
 医薬品の有用性について偏りなく簡潔に要約した2次情報の重要性がある。今回紹介した論文は、そうしたコミュニケーション・ツール(情報伝達の道具)を一般の市民がどのように理解できるかを大規模な「ランダム化比較試験」成績で示した貴重なものである。  (T)