米国医学研究所(IOM)が医師に製薬企業からの贈り物を受けないよう提言
2009-06-23
(キーワード: 米国医学研究所(IOM)、利益相反管理、提言)
医師の製薬企業・医療機器企業との金銭的関係の開示を求める医師支払サンシャイン法案が議会に提出(※1) される一方、FDA改革の提言(※2)など影響力の大きい提言を行ってきている米国科学アカデミー・医学研究所(IOM)が2009年4月25日、「医学研究・教育・実務における利益相反」のレポートを発表した。
IOM(※3)は、2007年にこのテーマについて検討・提言する委員会を設置しており、今回のレポートで医学・医療関係施設が利益相反に対するポリシーを確立し、個人・施設の企業との財政的関係を開示し、利益相反を管理するよう推奨している。
このレポートは分厚い書籍であるが、ニューイングランド医学雑誌(NEJM)2009年5月21日号(電子版記事はフリーアクセス)が内容を伝えている(※4)。同誌は、今回のIOMレポートは、非常に広範に利益相反の問題をとりあげているのが特徴としている。医学研究、教育、実務の多面にわたり、金銭的利益相反を中心に置きながら、成功願望などから生じる利益相反についても扱っている。議会には、医師支払サンシャイン法の内容を充実した上での制定を期待している。医師生涯教育(CME)については、現在の企業からの基金によるシステムは受け入れ難く、続けるべきでないとし、コマーシャルバイアスのない制度とすべきとしている。
ニューヨーク・タイムズ紙電子版2009年4月29日(※5)は、「米国で最も影響力の大きい医学諮問団体であるIOMが、医師たちにこれまで日常的に製薬企業から受け取ってきた金銭、物品などを受けないよう提言した」と報道している。また、「利益相反を生じ、医師の高潔な使命と名声を脅かし、社会からの信頼を危機にさらす、これまで長く受け入れてきた製薬企業との関係と慣行を、医科大学は今こそ終わりにする時だ」とレポートが結論したことを報道している。
ファイザー社による医師への支払い開示の決定(※6)、医師支払開示サンシャイン法案の議会への提出(※1)、このIOMの利益相反管理強化の提言など、米国の医師への支払い開示、利益相反管理強化の動きが高まっている。グローバル化のなかで、日本の遅れた状況の改善が急がれる。 (T)