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患者・市民の利益につながる医薬品評価のための4つの提言

2009-06-23

(キーワード:秘密主義、患者参加、透明性の法的要求、中立的臨床試験、付加価値の証明)

 BMJ(英国医学雑誌)電子版2009年3月31日号に、シルヴィオ・ガラティーニ氏とイアン・チャルマー氏による、医薬品の評価における大変革のための4つの具体的な方法が提案された。医薬品の評価や承認に関わる秘密主義を終わりにし、患者の利益を最重要課題として位置づけた医薬品評価に変革するというものである。これらの提案は政府・製薬業界にとっては受け入れがたいように見えるが、長い目でみれば彼らの利益につながるとの主旨である。以下は要約である。   
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 製薬業界は、市民の信頼を回復するために大きな変化を遂げることが求められている。現在のように悪名高くなった理由を数え上げればたくさんある。その1つは、患者にとってではなく、製薬企業にとっての重要性に基づく優先課題により、研究開発目的が歪められているという問題である。
 また製薬業界は、薬の開発に多大な費用をかけているが、市民はそれらの費用を、真の市場が存在しない中で、税金や、健康保険料や医薬品に対する直接支払いなどの形で負担している。患者・市民は投資に対して貧困な見返りしか得ていないのだ。低コストでより利益を得るには、薬の評価方法における大きな変化が必要なのである。
 製薬企業が国家経済にとっての多大な貢献者である国々においては、どの政府も企業の商業的繁栄を無視できないであろう。英国では、製薬業界は通商産業省よりも主に保健省と相互に影響しあっており、それは薬が患者のために作られたものであるから当然である。しかしEMEA(英国医薬品庁)は企業産業長官に対して責任を負っている。これは欧州各国政府が、薬を健康維持・増進するものとしてよりも商品と考えていることを示している。EMEAの活動費は企業により支払われ、秘密主義に囲まれている。当局の決定を外部者が検証することはできず、評価委員会が全員一致でなく販売承認を行った時も少数意見は公表されない。欧州公共評価報告書と製品概要は、製薬企業との共同で作成提出され、患者・市民の利益を代表する者からの批判的吟味を受けない。
 欧州各国政府が、現在の状況を維持し続けるならば、非難を浴び続けることになるだろう。
 政府が、薬の評価における支援のバランスを、患者と保健サービスに好ましいものに改めることのできる4つの方法は、1)研究開発目的の設定に患者を関与させること、2)薬の評価における透明性を法律により要求すること、3)中立的な評価を要求しそのための資金提供をすること、4)すべての新薬に付加的価値の証明を要求すること、である。
この提案は、患者・市民に支持されると信ずる。政府や製薬業界がこの提案を受け入れるのは、はるか遠い道のりに思える。しかし、受け入れることで市民の信頼が回復し、科学的にまたは財政的に適切な開発が行われることで、結局は彼らの利益につながるのである。
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 ガラティーニ氏は日本薬剤疫学会で講演されたときも話されていたことだが、「新薬承認における第3相試験は2つ以上行なわれるべきであり、そのうちの1つは、当該製薬企業とは独立の組織が実施すべきである」と述べている(※1)。ほぼ全部の試験が製薬企業によって行われている日本の現状は変革されねばならない。当会議は厚生労働省の「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」のパブリックコメント募集に際し、臨床研究のための公的基金創設の意見を提出した(※2)。2009年4月30日に出された「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて」の厚生労働省検討委員会第1次提言(※3)は、「諸外国の例も参考に、政府による臨床研究に対する財政支援を増大させるとともに、そのための公的基金の設立等制度の整備を検討するべきである」(27ページ)と記しており、実現が望まれる。 (N)