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「米国FDAは最初の6か月間に新薬の1/3にREMSを課す」

2009-03-02

(キーワード:リスク評価.リスク緩和戦略、REMS、FDA改革法、FDA再生法)

 REMS(リスク評価.リスク軽減戦略, レムズと読む)は「FDA再生法」に基づいて、新たに導入されたシステムである(註1)。FDAは 必要と認めれば、企業に対して市販後であれ市販前であれ、医薬品のリスクを見極めそのリスクを最小限にするための管理プログラムを提出させることができる(※1) 。REMSの基本項目はいまのところ、指摘されたリスクについて、1リスク評価のタイムテーブル 2.安全使用の保証方法 3. Medguide(患者への説明書)4.コミュニケーションプラン 5.実行する上でのシステム などであるが、まだ企業に向けたガイダンス(手引書)はできていない。「FDA再生法」が施行された2008年3月から半年余りの間のREMSをめぐる状況について、ピンクシート誌2008年11月10日号が伝えている。以下に紹介する。
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 6ケ月の間にREMSの提出を要求されたのは新承認薬49品目では8品に(16%)、そのうち新規物質16品目では5品(31%)である。これまでに企業から提出されたREMSプログラムのうち17品目が承認された。この17品目についてそれぞれのREMSのアウトラインを表にして本誌に掲載したが、それぞれの品目により要求された基本事項は異なっており、すべてが要求されるわけではない。今回は、12品目がタイムテーブルとMedguide(患者への説明書)のみの要求である(註2)。 
 REMSについて、製薬企業にはかなりの恐れやとまどいがあったが、今のところ、企業が恐れていた程にFDAはREMSを広範囲に使用してはいない。この半年に出されたREMSが、FDAのREMS適用の基本線を示していると考えられるが、REMSの執行状況に対しては、いろいろな思惑が飛び交っている。FDAはこのシステムを“思慮深く、強力に”使っているという評価がある一方で、FDAは“保守的だ”、“法律どおりに厳しく行えば、多くの古くなっている添付文書情報にREMSが適用できるはずだ”との見方もある。
 このREMSについて、元FDA職員でありWyeth社の元副社長という肩書きを持つBruce Burlington 氏 は、「旧法では絶対に市場に出せなかった薬を、REMSの適用でリスク/ベネフィットのバランスを変えることができ、市場に出せることになる。この点は、企業からみた新法にたいする希望の一つだ」という。これについて、FDAの顧問弁護士Lynn Mehler 氏も、「たしかにそれはこの法律の重要な点である。なぜなら、REMSは、ある薬を承認しても大丈夫だと確信できるような適切な位置におくようにした規制だからである」と同意している。
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 REMSは、医薬品の安全確保のために議会がFDAに新たな権限を与えた「FDA再生法」のもとで設けられた制度である。医薬品のもたらす利益がリスクを上回ることを保証するために、FDAはREMSを実施し、必要な際には流通と使用の制限もできるようになった(※1)。FDAが新たな制度・権限を生かし国民の安全を守ることができるか、今後の運用を監視したい。
 なお、厚生労働省に設置された「薬害肝炎事件の検証および再発防止のための行政のあり方検討委員会」が2008年7月に公表した「中間とりまとめ」もREMSに言及している。真に薬害防止に役立つリスク管理システムを日本に導入するうえでも、今後、米国でREMSがどのように実行されていくのか、注目していく必要がある。  (S)


註1 Risk Evaluation Mitigation Strategies(リスク評価.リスク軽減戦略)企業がREMSに違反した場合には罰則がある。

註2 FDAサイトにも承認されたREMSプログラムのアウトラインが掲載されているが、詳細は3品目しかみられない(※2)。これまでにない効能を有する新薬romiplostim(Nplate)には80ページにわたる詳しい資料、またalvimopan(Entereg)には32ページの資料がついているが、フルチカゾン/サロメテロール(アドエアディスカス)は1ページの資料のみである(※3)。ちなみに、REMSプログラムが承認された17品目中で日本でも販売使用されている薬は7品目である(括弧内は日本における商品名)。
   *フルチカゾン/サロメテロール(アドエアディスカス)
   *エタネルセプト(エンブレル)
   *フルオロキノロン類
   *インタフェロンα-2a(イントロン A)
   *インタフェロンα-2b/リバビリン (ペグイントロン レベトロール)
   *スマトリプタンスクシネート / ナプロキセン
   *ネビラピン(ビラミューン)
   *アバカビル(エプジコム錠、ザイアジェン錠)
上記7品目のREMSの基本項目はいずれにおいても、「Medguide(患者への説明書)」と「リスク評価のタイムテーブル」となっている。