米国FDA100周年 FDAは危険な医薬品などから国民を守れていないとの批判が
2006-08-02
(キーワード: FDA100周年、消費者保護、医薬品の安全性・有効性、意思決定の独立性)
2006年6月、米国FDA(食品医薬品局)は創立100周年を迎えた。FDAは、米国で初めての消費者保護を目的とした官庁として創設された。100周年を前にして2つの大きな問題がFDAを揺るがせた。1つは、処方せん医薬品の安全性問題で、COX-2阻害剤と呼ばれる抗炎症剤の1種ロフェコキシブ(バイオックス)による未曾有の大規模な薬害、SSRIなどの抗うつ剤による自殺リスク増大などの問題である。もうひとつは、必要とする女性のアクセスをよくするための緊急避妊薬プランBのOTC販売(処方せんを必要としない薬局などでの販売)移行承認問題である。FDAスタッフが承認を決めたあと、FDAの諮問委員会がほぼ全員一致で承認を了解したが、キリスト教原理主義の立場から避妊薬・妊娠中絶薬などを嫌うブッシュ政権の圧力のもと、FDAはこれまでの慣例に反してプランBを承認しなかった。この件はFDAスタッフの抗議の辞任を呼び、その直後にFDA長官の突然の辞任があり、後任のFDA長官代行はいまだ議会の認証が得られていない。
FDAはその役割を果たしえているか、各方面から批判の声があがっている。
スクリップ誌2006年6月7日号は、ウォールストリート・ジャーナルとハリス・インタラクティブ・ヘルスケアがこの5月に実施した2371人の成人を対象とした世論調査の結果を記事にしている。
ここ2年の間に、FDAが処方せん薬の安全性と有効性を確保しえているか、疑問に思う米国人が増加した。また、FDAは独立して方針を決定しえているかを疑問に思う米国人も増加した。FDAによる新薬の安全性・有効性確保について、2年前には56%が良好または優秀と評価していたが、今回は36%に減少した。一方、疑問を呈した米国人は37%から58%に増加した。また、今回、82%が、FDAの決定が医学的科学的にではなく、政治に影響されていると感じていると回答した。また、FDAの諮問委員会については、3人のうち1人が諮問委員会メンバーは製薬会社とコンサルティング契約を結ぶことを容認されるべきでないと考えており、4人のうち3人が諮問委員会メンバーは会社の株券を保持したり売買したりすることを容認されるべきでないと回答した。
ウェブサイトではパブリックシティズンや公益科学センター(CSPI)が、FDAは消費者を守るために法的な強制力をもった行政責任を有している自己の立場を忘れ、しばしば規制すべき企業の意のままになっていると批判している。パブリックシティズンは、1992年のユーザーフィー法(新薬審査費用を利用者である製薬企業が負担するとした法律)以来、FDAが費用を負担する製薬企業を規制すべき対象としてではなく顧客として取り扱う傾向が助長されていると指摘している(※1)。
医学総合誌ランセット2006年5月20日号は、評論で「FDAの独立性」の問題をとりあげている。フォン・エッシェンバッハ氏が緊急避妊薬プランBのOTC販売承認問題でつまずき、上院でFDA長官の認証を阻まれているが、FDAは自身の専門スタッフと科学的アドバイザー(諮問委員)による最善の科学的判断を尊重する独立性をもったコミッショナー(長官)に率いられることが必要であり、フォン・エッシェンバッハ長官代行は直ちにプランB承認の決定を下すべきだと述べている。 (T)
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