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米国パブリックシチズンが、ガチフロキサシンの使用禁止を求める請願書をFDAに提出

2006-07-04

(キーワード: 抗菌剤ガチフロキサシン、フルオロキノロン系抗菌剤、使用禁止の請願書、パブリックシチズン)

  3月の注目情報で、ガチフロキサシンが重篤な血糖値不良を起こすことを指摘したNEJM誌の報告を紹介した(※1)。ガチフロキサシンの血糖値不良は、服用後、数時間で低血糖を起こす場合と、数日後には高血糖になる危険性とがあり、どちらが出るか予知することは出来ない。本薬は杏林製薬(現キョーリン製薬)で創薬されたフルオロキノロン系物質で日本では2002年から販売されている。これに先立つ1996年杏林製薬は、米国、カナダ等における開発、販売権についてブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)社とライセンス契約し、米国では1999年より販売が開始された(商品名:Tequin(テクイン))。 
 米国では抗菌剤処方のうちフルオロキノロン系が最も多く処方されていると言われているが(Am J Med. 2005 Mar;118(3):259-68)、4月28日、キョ-リンは、BMS社が収益力の低下を理由に販売中止の方針を決めたことを発表し(※2)、BMS社も、顧客に向けて同様な発表を行い、開発、販売権をキョウリンに返却予定であり6月2日で販売中止すること、しかし今ある製品はそのまま使用してもかまわないとした(※3)。このBMS社の発表に対して、米国パブリックシチズンは、5月1日、ガチフロキサシンの副作用は他に類をみないものであることを指摘してこの抗菌剤の使用禁止をFDAに要求し請願書を提出した(※4)。すでに市場にあるこの抗菌剤によって重篤な副作用の被害が増えることを危惧したものである。FDAの承認資料では、すでにPhase1で審査官が血糖値不良の傾向を認めているが、薬との関連性を指摘していなかった。
  請願書では、米国有害事象報告システム(AERS)とカナダ有害事象モニタープログラム(CADRMP)のデータ分析を初めとして、これまでに報告されている症例対照研究、メーカーが行った人での安全性試験(コホート研究、症例対照試験、市販後調査、症例報告を含めて)を分析した結果から次のように結論している。1)非糖尿病患者でも、ガチフロキサシンと血糖値不良を起こすという強いエビデンスがある。2)AERSの報告をもとに処方箋当たりの血糖値不良を比較すると、ガチフロキサシンでは他薬と比較して11-12倍も多い、3)その結果死亡した人は、16-18倍である。4)すでに4回行われたドクターレターや添付文書改訂が医師の処方を変える力になっていない。5)ガチフロキサシンの承認された適用項目は、いずれも他薬で代替できないものはない6)フルオロキノロン系薬剤に共通した副作用について、ガチフロキサシンがこの系の他薬と比べてリスクを軽減しているわけではない。
 
FDAはBMS社に対して2月に、血糖値不良の副作用に関する注意を強化するよう指示し3月20日に4回目の添付文書改訂がされており、今回のメーカーの販売中止の決定には副作用問題があると思われる。しかし、これは米国のことであり、日本では国もメーカーも製造・販売中止の動きはなく、相変わらず患者に投与されている。
                                 (S)