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パキシル服用患者全例に慎重なモニタリングが必要、FDAが警告

2006-06-22

(キーワード:抗うつ薬、パキシル、SSRI、自殺行動、副作用)

抗うつ薬パキシル(成分:塩酸パロキセチン)に関連する有害反応については、これまでにも何度か注目情報で取り上げてきた。最近では、妊娠初期3ヶ月間にパキシルを服用すると胎児奇形のリスクが高まるという警告が、2005年9月に添付文書の「妊娠/使用上の注意」改訂として出されている。さらに2005年12月には「警告」の項に妊婦への忠告とデータが追加されたことをお知らせした(※1)。
 2006年5月12日、FDAはパキシルについて、自殺行動や自殺念慮の懸念に関する警告を出した(※2)。それによると、大うつ病、その他のうつ病、うつ病以外の疾患(気分変調症、パニック障害、全般性不安障害、強迫症状)での、パキシル効果を検証するためのプラセボ対照試験結果をまとめた研究結果から、パキシルには自殺を増加させる可能性のあることが示唆されたとしている。この研究結果は、パキシルを服用した若年成人(18-24歳)群はプラセボ群に比べ、統計学的には有意ではないものの、自殺行動の割合が多かった(パキシル群2.19%、プラセボ群0.92%)というものである。また、同研究における大うつ病患者データの分析では、やはりパキシル群で自殺の頻度は増加し(パキシル群0.32%、フラセボ群0.05%)、かつ統計学的にも有意であったとしている。
 この研究結果を受けFDAは、対象疾患の種類に関わらず、パキシル服用患者全て(特に若年成人や回復期にある人)で投与中の注意深いモニタリングが重要であるとの警告を出した。またパキシル製造元のグラクソスミスクライン社はドクターレターを出し、添付文書改訂を行っている(※3)。
 今回の研究結果だけではパキシルと自殺傾向の因果関係を結論づけることはできないものの、パキシルの危険性を示唆する重要な情報である。
 日本では上記結果を受け、2006年6月2日に添付文書「使用上の注意」の「重要な基本的注意」と「その他の注意」の改訂がなされたところである(※4)。なお、日本でのパキシルの適応症は「うつ病・うつ状態、パニック障害、強迫性障害」である。
また、パキシルを含む抗うつ薬の一群であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)については、ニューイングランドジャーナルオブメディスン誌2006年2月9日号に発表された研究で、妊娠後期に服用すると新生児に遷延性肺高血圧症が起こる可能性があることも示唆されている(※5)。(Y)