HPVワクチンの有効性に関するフィンランドの研究に関する見解 −子宮頸がん予防効果を示すものとはいえない−
2018-07-14
薬害オンブズパースン会議は、7月14日、「HPVワクチンの有効性に関するフィンランドの研究に関する見解−子宮頸がん予防効果を示すものとはいえないー」を公表しました。
International Journal of Cancer誌に掲載されたフィンランドの研究(Int J Cancer. 2018 May 15; 142(10): 2186-2187.)が、HPVワクチンを推進する立場の人々によって、本ワクチンによる子宮頸がん(浸潤がん)減少効果を示す根拠として紹介されることがみうけられます。
しかし、これはあくまで「Letter to the Editor」として公表されている速報にすぎないうえ、公表内容から判断される範囲においても本速報の分析方法と結果には以下の問題点が存在し、これらの点を考慮すれば、本速報の結果をHPVワクチンによる子宮頸がんにおける浸潤がん減少効果の根拠として扱うことは不適切です。
1 子宮頸がんについて、有意差は示されていない
本速報では、HPV関連浸潤がんの発生が、非接種群では10人であるのに対し、接種群では0人となったことを示して、浸潤がん減少効果が統計学的に有意であったと述べていますが、非接種群中の浸潤がん10人には、子宮頸がんではない浸潤がん2人(口腔咽頭がん・外陰部がん各1人)が含まれています。
そこで、この2人を除き、子宮頸がん(浸潤がん)8人をもとに接種群と比較して、子宮頸がんの浸潤がん減少効果について統計的検定を行うと、有意差は示されていません。
2 対象者背景、検診頻度や治療介入条件の偏りを分析において考慮していない
本速報の接種群は臨床試験対象者であるのに対し、非接種群は主として実臨床における一般住民であり、2群間における背景の偏り、接種・非接種以外の条件(検診の質や頻度、標準治療介入の内容など)の偏りが顕著であった可能性があります。このことは、乳がん、甲状腺がん、メラノーマというHPV関連以外のがんにおいてもHPVワクチン非接種者群の方が接種者群よりも多い傾向が認められていることからも推察されます。
3 本速報にはHPVワクチン製造販売メーカーとの明らかな利益相反が存在する
本速報の著者のうち、4人はHPVワクチン製造販売メーカーであるメルク社およびGSK Biologicsから研究助成金を受け取っており、HPVワクチン(ガーダシル、サーバリックス)の臨床試験を行った研究グループのメンバーです。また本速報の分析は、フィンランドアカデミー・フィンランドがん協会・北欧がん連合の他に、GSK Biologicals SAからの助成も受けて行われています。
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