「子宮頸がんワクチン」(HPVワクチン)の費用対効果に関する見解
2013-12-25
当会議は、2013年12月25日付で、「子宮頸がんワクチン」(HPVワクチン)の費用対効果に関する見解を公表しました。
以下は、その要旨です(全文は、末尾資料欄をクリックしてご覧ください)。
1 子宮頸がんワクチンは、2013年4月に定期接種化されましたが、定期接種化決定に当たっては、厚生労働省厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会において、ワクチンの有効性と安全性に加え費用対効果も重要な要素として考慮されました。
ところが、作業チーム報告書において文献レビューの対象とした論文のうち、表に整理してまで紹介している国内先行研究の1つについて、ワクチンの製造販売メーカーであるグラクソ・スミスクライン社の社員が執筆していたにもかかわらず、その事実が論文に明記されていなかったことが明らかになりました。
これに対し、グラクソ・スミスクライン社は、報道によれば、論文発表の仕方の不適切さは認めながら、内容には問題がない旨をコメントしています。
2 しかし、内容にも問題があります。
HPVワクチンは、16型と18型のHPVにしか効果がありません。この両型が占める割合(蔓延率)を仮に約50〜70%と見るとしても、定期接種化によるワクチン接種率が100%になるということはありえず、ワクチンが接種者全員に有効性を発揮するわけではありませんから、ワクチンの効果は蔓延率を下回るはずです。また、そもそも、HPVワクチンの効果として証明されているのは、異形成を防止する効果のみで、子宮頸がんそのものを防ぐ効果は証明されていません。異形成防止についても最長で9年間のデータしかありません。
にもかかわらず、上記の論文は、ワクチンによって子宮頸がんの罹患や死亡を70%以上減少させるという前提に立ち、しかも、20代から30代の女性の立場に立った検討であるとして、ワクチンの接種費用をゼロとして計算しています。
このような前提での費用対効果推計は、グラクソ・スミスクライン社の社員として自社に有利な結論を導くために行った偏りであるという他はなく、しかも本来の所属である企業名を伏せて公表したのですから、これは全体として意図的な操作であると評されても致し方ありません。
なお、厚労省の小委員会の作業チームが表まで作成して紹介した国内論文は3つで、上記の論文の他に2つありますが、いずれについても、グラクソ・スミスクライン社のワクチン事業を扱うグループ会社の社員が執筆に加わっています。
3 費用対効果の推計の前提となるワクチンの効果を過大に評価しているという問題点は、厚生労働省の予防接種部会の小委員会報告書にもあてはまります。
小委員会報告書は「医療経済的な評価については、ワクチンの長期的な効果の持続期間が明確になっていないことから、13歳女子に接種したワクチンが生涯有効であると仮定して、費用効果分析を行った場合、1QALY獲得あたり約201万円と推計され、費用対効果は良好と考えられた。」としているのです。
ワクチンの効果持続期間が不明であるから、生涯有効と仮定するというのは、著しい飛躍であり合理性を欠いています。
HPVワクチンが子宮頸がんを減少させる効果は「期待される」としかいえない一方で、ワクチン接種までは健康で通学していた少女達が、通学できなくなる、車椅子での生活を余儀なくされる、将来の夢を諦めざるを得なくなるといった深刻な被害が現に発生しています。ところが、こうした被害に関して生じる医療費や経済的な損失は、費用対効果の推計では一切考慮の対象となっていません。
ワクチンは、健康な人に接種するものですから、極めて高い安全性が必要です。HPVワクチンは、有効性と危険性のバランスを失しており 、費用対効果の点でも重大な問題があります。
当会議は、2013年9月25日付で「『子宮頸がんワクチン(ヒトパピローマウイルスワクチン)』に関する要望書」 を公表し、定期接種の中止等を求めていますが、改めて定期接種の中止を求めます。
まして、積極推奨再開など断じてするべきではありません。