ソフトコンタクトレンズ消毒剤MPS使用者におけるアカントアメーバ角膜炎発症防止に関する要望書提出
2009-12-16
当会議は2009年12月16日付で消費者庁、消費者委員会及び厚生労働省に対して「ソフトコンタクトレンズ消毒剤MPS使用者におけるアカントアメーバ角膜炎発症防止に関する要望書」を提出しました。
1 要望書提出の経緯
近年、アカントアメーバ角膜炎が急増しており、その90%がコンタクトレンズ(CL)装用者で、中でも多いのは、2週間頻回交換ソフトコンタクトレンズ(SCL)とSCL消毒剤MPS(multipurpose solution:多目的用剤)を使用している者であるといわれています。
アカントアメーバ角膜炎とは、淡水、海水、土壌などに生息する原生動物アカントアメーバが、角膜障害部位から侵入増殖して発症するものです。診断・治療が難しく、病状が進むと視力低下をきたし、失明に至ることもあるという重篤かつ難治性の疾患です。
MPSとは、1剤で洗浄、消毒、すすぎ、保存を行うことを目的としたSCLケア用品(医薬部外品)であり、日本では1996年から販売されています。
眼科医の間では、ここ数年、アカントアメーバ角膜炎が急増しているとの報告が多数なされていますが、その実態や原因は明らかではありません。
そこで、薬害オンブズパースン会議は厚生労働省等に対して、実態調査・原因究明を行うとともに、アカントアメーバ角膜炎の発症を防止するための対策を講ずるよう求めて、要望書を提出しました。
2 要望の趣旨
(1)MPS使用者に対し、アカントアメーバ角膜炎発症の危険性等について、直ちに警告を行うこと。
MPSは、薬液に保存中のCLを、中和操作を要することなく装着することができる設計となっているため、安全性確保の目的で消毒成分の濃度が低くなっています。中でも特に、アカントアメーバに対する消毒効果については、現在販売されているMPSは無効であるとの指摘が多く、擦り洗いによってCL表面から物理的に微生物を除去するなど、MPSについて定められた使用方法を遵守する必要があります。MPS製品の添付文書等には、その必要性についてある程度の記載がなされていますが、それにもかかわらず、患者の中にはこれを守っていない者が存在するとの報告があり、用法遵守の重要性が十分に認識されていない可能性があります。
そこで、アカントアメーバ角膜炎発症の危険性等について警告を一層強化するとともに、適正使用情報の徹底を図るべきと考えます。
(2)厚生労働省内に調査委員会を設置して、MPS使用者におけるアカントアメーバ角膜炎発症の実態調査・原因究明を行い、その結果を公表すること。
MPS製剤の製造(輸入)承認申請に際しては、アメーバに対する消毒効果試験の資料添付が求められてはいるものの、評価の基準や方法は統一されていません。そして、現在販売されているMPSについては、アカントアメーバには無効であるという見解が多いものの、効果があるという報告も存在するようです。
そこで、現在販売されているMPS製品のアカントアメーバに対する消毒効果を調査して、近時、アカントアメーバ角膜炎が急増しており、MPS使用者がその多数を占めるとされている原因を究明すべきと考えます。
さらに、MPS使用者において、擦り洗い等の使用方法が遵守されているかなど、使用実態の調査を行い、感染経路における問題点も洗い出す必要があります。
(3)MPSの製造(輸入)承認申請の際に必要とされるアメーバに対する消毒効果試験の資料について、準拠すべき試験法を定めること。
MPSのアカントアメーバに対する消毒効果が十分でなく、そのことがアカントアメーバ角膜炎発症の主たる原因となっている可能性があり、また、製品によって消毒効果にバラツキがある可能性もあります。
これらのことが、前項の調査によって裏付けられた場合は、あらゆるMPS製品において一定の消毒効果を確保するため、製造(輸入)承認申請の際に必要とされるアメーバに対する消毒効果試験の資料について、準拠すべき試験法を定め、評価基準・方法を統一する必要があります。
そして、消毒効果の評価基準を定めるにあたっては、前項の調査結果をふまえ、現在の使用実態においても十分な消毒効果が得られるように設定すべきです。
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