調査・検討対象

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公表要件廃止と新医薬品審査情報公開に関する問題

1 これまでの経緯

新薬承認審査の信頼性などを担保するために、1967年来義務づけられていた「原則として主な申請資料データは学会誌などに公表する」という要件(公表要件)が、1999年4月に 廃止された。公表要件制度はサリドマイド事件を契機に設けられた制度であるが、法律によってではなく、薬務局長通知によって定められたために、廃止についても十分な議論を 経ずに局長通知で行うことが可能であった。医薬品の有効性・安全性に関わる情報の公表に関するこのように重要な制度は、本来法律で定めるべきであり、局長通知レベルに委ねられていることがそもそも問題であった。
また、国の行政機関がそれまで行っていた規制を廃止しようとする場合は、その内容を公表し広く国民の意見を求める必要があるという「パブリック・コメント制度」が同じ月に発足する、まさに直前のかけこみ的な廃止でもあった。
当会議はこれに対し、短期的には、公表要件制度の撤回を厚生省(当時)に申し入れると ともにロビー活動などを実施した。また、中・長期的には、「新医薬品承認審査概要」公表や情報公開法などの運用により公開される情報の範囲などを総合的に検証した上で、医薬品に関する情報公開のあるべき姿について新たな法律(制度)制定も射程に入れた活動をすることにした。本問題研究班が知的財産権や情報公開法の問題などを踏まえた検証を開始し、平行して、関係各団体、研究者との情報交換、意見交換を続けた。
1999年11月3日には、タイアップグループ2周年記念行事に、米国「パブリック・シチズン」(情報公開法を駆使して薬害訴訟や新薬情報公開などを精力的に進める市民団体)の弁護士アマンダ・フロスト氏を招き、シンポジウムを開催した(1997年-2000年10月活動報告参照)。

2 当会議の活動

厚生労働省が公表要件の廃止の代替手段と位置づけたインターネットでの「新医薬品承認審査概要」の提供は、これまでの個々の論文にはない貴重な情報も提供されているので有用なものではあるが、詳細な情報が記載されていないため学術論文に替わりうるものではない。また、インターネットでの「新医薬品承認審査概要」の提供は非常な遅れを生じており、医療機関や第三者が検討するのに役立たないという不備を生じている。最近では、企業側に情報提供をもとめても、新薬情報集もできていなければ、論文もできていないといった状況もある。このような事態は、厚生労働省の公表要件廃止が影響しているのではないかと考えざるを得ない。
このため、当会議は2002年8月2日、厚生労働大臣宛に「公表要件の復活とインターネットでの『新薬の承認に関する情報』提供の迅速化を求める要望書」を提出した。要望事項は、1. 新薬承認の根拠資料の公表要件制度を2000年3月以前の状態に復すること、2. 公表要件廃止の代替システムとして導入された新薬承認情報集を中心とする「新薬承認に関する情報」提供の遅れの理由について、明らかにすること、3. 今後、「新薬承認に関する情報」を新薬承認と同時にインターネットで公表提供されること、である。 インターネットでの情報提供を新薬承認と同時としたのは、医薬品を販売する製薬企業は、製品の宣伝のための情報を、承認され販売される前から準備しており、情報のバランスの上で、一方的に企業からの情報のみが医療機関に伝達されるのは好ましくないことによる。
当会議は厚生労働大臣への要望書と同時に、骨粗しょう症治療剤フォサマック、喘息治療剤シングレアのインターネットでの情報提供の遅れが際だった萬有製薬に対し、提供の遅れについて説明を求めるとともに、今後は新薬承認とともに提供することを求める要望書を提出した。厚生労働省からは何の回答もないが、萬有製薬からは2002年10月4日、上記2品目について、厚生労働省との情報非公開部位(マスキング部位)をどうするかの摺り合わせに時間がかかり遅れを生じたが、今後迅速な情報提供に努力したい旨の回答が寄せられている。

3 その後

医薬品の承認審査業務は、2004年4月1日、医薬品医療機器審査センターから、独立行政法人医薬品医療機器総合機構に移行し、同機構のホームページに「新薬の承認に関する情報」が公表されている。
しかし、この情報の提供が遅れている。2008年に承認された新薬の「審査報告書」「審議結果報告書」は約半数しか公表されていない。また、2007年に承認された新薬に関しても公表されていないものもある。
申請資料概要に至っては、2008年に承認された新薬に関しては1つも公表されておらず、2007年に承認された新薬に関しても約4割が公表されていない。

トピックス

  • 薬害オンブズパースン会議
  • タイアップグループ
2002-08-02
「公表要件制度要望書」提出

機関紙

該当する情報はありません。