ドルミカム注
1 ドルミカムとは
一般名 | ミダゾラム |
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商品名 | ドルミカム注 |
薬効分類 | 向精神薬 催眠鎮静剤 (ベンゾジアゼピン系) |
適応 | 麻酔前投薬、全身麻酔の導入及び維持、集中治療における人工呼吸中の鎮静 |
薬価収載 | 1988年5月 |
再審査結果 | 1996年3月 |
効能追加 | 2000年7月 (集中治療における人工呼吸中の鎮静) |
特徴 | 作用発現や体内からの消失が速く、鎮静後の覚醒が速やかなため、従来の催眠鎮静剤に比べて使いやすいとして検査前などの鎮静を目的に広範に使用されている。しかし、作用の反応性に個人差が大きく、投与量の厳密な調整と、呼吸・循環器系のモニター監視のもとでの使用が必要である。 |
2 取り上げた経緯
- (1) 訴訟事例の報告から
手術後の鎮静を目的に本剤を使用し、呼吸抑制を来して死亡した訴訟事例があり、呼吸器系および循環器系の重篤な副作用の危険性を指摘する必要がある。 - (2) モニター設備なしに内視鏡検査等の検査前投薬(適応外使用)として広範囲に使用されている実態に対する問題意識から
我が国では本剤の検査前投薬は適応として認められていないが、作用発現が速く、短時間で覚醒することから、実際には内視鏡検査等の前投薬としてモニター設備がない場所で広範に使用されている実態について取り上げる必要がある。
3 何が問題か
- (1) 危険性
- ① 本剤は用量依存性の効果を示し、過量投与により呼吸・循環抑制を来しやすいが、反応性に個人差が大きく、慎重な投与量の設定が必要である。特に高齢者、呼吸器疾患、循環器疾患を有する患者に対して使用する場合の危険性が高い。
- ② 米国では1988年に46名の死亡例が報告され、投与量の見直しと注意書きの改訂が行われた。我が国では米国での多数の死亡例発生に関する情報に対する具体的対処は何ら実施されず。2000年7月、適応拡大に伴って添付文書の改訂が行われたが、投与量は見直されず、特に初期開始用量や最低用量が米国に比べて多く、高齢者や呼吸器系或いは循環器系疾患患者のリスクを回避する手だてが不十分である。
- (2) 厳重な観察と緊急処置ができる設備下で使用すべき薬が厳密な管理なしに適応外使用されている実態がある
2000年7月に集中治療における人工呼吸中の鎮静に対する使用が認められたが、実際には厳密な管理なしに、適応外使用である内視鏡検査等の検査前投薬が広範に実施されている。米国FDAの報告では、検査前投薬による死亡例が最も多く、日本での使用実態に対応した安全性対策が必要である。
4 行動指針
- (1) 米国での副作用被害の実態とその対応を調査する。
- (2) 日本における使用実態と副作用被害の状況を調査する。
- (3) 本剤の危険性を明らかにし、安全な使用方法と、適応外使用に対する問題提起を行う。
5 具体的な行動と結果
- (1) 米国パブリックシチズン(PC)に、米国での副作用被害の実態とその対応に関して情報提供を要請し、1988年1月にPCがFDAに対して提出した文書を入手し、検討した。その結果、米国では、40名の死亡者が発生し、中でも検査前投薬での死亡例が最も多い。そのため、用量の減量、低濃度の製品の追加発売、注意書きの改訂が行われた。
- (2) 日本での副作用の発生は医薬品安全性情報からは、呼吸抑制、循環不全などの重篤な副作用が報告されていること。また、集中治療における人工呼吸中の鎮静(適応拡大)を目的とした臨床試験結果においても、16.1%に副作用が発生し、いずれも血圧低下、不整脈、妄想という重視すべき症状であったことなどが明らかになった。
しかしながら、本剤の最も使用頻度が高いと考えられる検査前投与による被害に関しては、適応外使用ということから実態を把握する事の困難さがある。 - (3) 適応外使用の実態を把握するため、検査前投薬に関して書籍や雑誌の記述、学会発表を調査した結果、1985年前後に内視鏡学会では本剤の検査前投薬の有用性に関して多くの演題発表があり、メルクマニュアル日本語版をはじめ、多数の書籍や雑誌にて検査前の鎮静を目的とした投与に関する推奨薬剤として本剤が取り上げられていた。
6 取り組みの問題点・今後の課題
- (1) 最も広範に使用されている検査前投薬に関して使用実態や副作用被害状況の把握が困難である。適応外使用の問題に関する検討が必要である。
- (2) 本剤の危険性について市民、医療現場に対して情報提供し、安全な使用を促す必要がある。
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