No.3 (1998-08-01)
昨年6月ベロテックは危険であり不要との指摘をしたところ、正しい喘息治療のあり方が真剣に議論され、ベロテックを中止した医師や患者は多かったようです。
喘息死の減少に寄与できたならば、初期の薬害オンブズパースンの活動の目的は半ば達成できたといえます。そこで、喘息死亡率をオンブズパースンの活動の前後で比較してみました。
喘息死亡率は季節変動が大きいので、1月〜5月と6月以降に分けて95年と96年の平均と、97年とで比較しました。97年の1月〜5月は喘息死は減少しませんでしたが、6月〜11月は前2年間の平均より40%以上減少しました。季節調整をすると人工10万人あたり0.38(5〜34歳)と、1984年以前のベロテック承認前の喘息死亡率の状態まで低下しました。これは、オンブズパースンの活動の成果を示していると言えるでしょう。また、販売高との関連は、ベーリンガー・インゲルハイム社にデータを請求しましたが、回答がないため、残念ながら検討できませんでした。
喘息死がほとんど自宅で起きる理由を解明する鍵が見つかりました。イヌを低酸素状態にしてベロテックと同系統の薬剤を注射すると、通常では無毒な量で心停止したという文献がありました。酸素吸入ができる病院では死亡が少なく、自宅では強い喘息発作で容易に低酸素状態に陥るために心停止し易くなるという理由がよく理解できます。
ベーリンガー・インゲルハイム社がどのように反論しても、多数の疫学調査、動物実験、臨床例、オンブズパースン活動後の喘息死亡率の減少など、どれもがベロテックの危険を示しています。さらに徹底してベロテックの中止と代替薬への変更を推進すべきでしょう。