閉じる

 2023年8月、薬害オンブズパースン会議は厚生労働大臣に対し、HPVワクチンの男子への接種促進に反対する意見書を提出しました。2020年12月に4価HPVワクチンであるMSD社製のガーダシルの効能・効果に、肛門がんと尖圭コンジローマが追加された結果、ガーダシルを男性に接種することが可能となったことを受けて、厚労省が男子への定期接種化の検討を進めていることに対し、反対する意見を提示したものです。

 肛門がんは極めて稀ながんであり、多くの場合、根治が可能とされています。尖圭コンジローマは生殖器やその周辺に形成される尖ったイボであり、自然治癒が多い良性病変です。他方、ガーダシルを含むHPVワクチンは、これまでに多くの女性に免疫介在性の神経障害としての多様で重篤な副反応症状をもたらしており、その危険性はすでに明白です。HPVワクチンによる副反応症状に対する治療法は確立しておらず、治療の受け皿となるはずの協力医療機関もほとんど機能していません。海外では、男子にも女子と同様の重篤な副反応が報告されており、訴訟も提起されています。肛門がんや尖圭コンジローマの予防のために、男子へのガーダシルの接種を推進することは、リスク・ベネフィットのバランスを著しく失しています。

 男子への接種を推進しようとする論者や自治体の中には、中咽頭がんの予防効果を理由に挙げる者もありますが、ガーダシルの効能・効果には中咽頭がんは含まれておらず、全く論外です。男子への接種を進める理由として、男子が女子にHPVを感染させることを防ぐことで間接的に女性の子宮頸がんを防ぐことが挙げられていますが、女子へのHPVワクチンの接種で子宮頸がんそのものを防ぐ効果自体が実証されておらず、ましてや男子への接種で間接的に女子の子宮頸がんを減少させることを示すような実証的データは存在しません。

 このように不合理な男子への接種が進められようとしている背景には、国や地方自治体が、今後の女子への接種が9価HPVワクチン(シルガード9)にシフトすることで生じるガーダシルの在庫を男子の接種へ回していくという認識が存在することが、昨年1月の東京都中野区議会における質疑から図らずも透けて見える結果となっています。

 残念ながら当会議が意見書を公表した後も、東京都を含む複数の自治体が独自の接種費用助成によってガーダシルの男子への接種を進めようとしており、情勢はさらに予断を許さないものとなっています。

 接種対象とされる男子とその保護者には、HPVワクチンが免疫介在性の重篤な神経障害を引き起こす危険性があることについて、正しい情報が伝えられていく必要があります。

閉じる