No.71 (2022-12-01)
弁護団では、HPVワクチン薬害訴訟の原告(東京、名古屋、大阪、九州の各訴訟の原告128人)を対象に、現在の治療・生活の状況についてアンケートを行いました。回答者数は98人でした。
回答者の87%は現在も入通院を続けていましたが、そのうち都道府県指定の協力医療機関を利用している方は29%でした。利用しない理由として対応に不満があるという声が多数聞かれ、協力医療機関が機能していない実態が見えてきました。また、片道2時間以上かかる遠方の医療機関に通院している方が全体の半分以上を占め、交通費の負担や付き添い家族負担が大きいことがわかりました。
新型コロナウイルス感染症が蔓延した2020年以降の入通院への影響については、59%が影響があったとし、他県からの入通院が困難になった、免疫吸着療法など一部の原告に効果があった治療について受けられなくなるといった声が聞かれました。
副作用被害救済制度については、障害手当は63%が不支給決定となるなど、十分な救済とはいいがたい状況でした。
さらに、収入、就労の状況、就労先での副反応への理解等についての回答から、原告の生活状況の困難さが浮き彫りになりました。
まず、就労については、フルタイム勤務は23%に過ぎず、無職22%、短時間勤務24%、障がい者向け作業所4%と、一般の就労はかなり難しい実態が見えてきました。副反応の影響から長時間は働けない方も多く、その結果、収入も10万円を超えていない方が69%となっており、経済的自立ができないことを悩む声が多く寄せられました。
また、就労した経験がない方も43%にのぼり、体調不良により就労や継続した勤務、決まった時間での勤務が困難であることが理由でした。就労しても72%が退職・転職・休職を経験し、理由としては継続勤務が難しい点が多く挙げられていました。
就労している方からは、就労先で何らかの配慮をしてもらっているという回答が58%に達し、雇用主の配慮が就労にとって重要と思われる一方で、副反応被害についてすべてを話せていないという回答が75%となっており、十分な理解は得られていないことが窺われました。
アンケートにより多くの方がいまもなお入通院を繰り返しており、重い経済的、肉体的負担を背負いながら治療を続けていること、生活面では、就労できない、あるいは就労しても継続は困難で、経済的に自立できない実態がみえてきました。このような実態について広く理解を求める活動が必要であり、こうした情報が提供された上で接種の判断ができるようにすべきでしょう。