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 HPVワクチンの積極的勧奨が中止され、8年余り経過した今、製薬企業(MSD)からの通告(警告・圧力)もあって、厚生労働省の副反応検討部会で2021年10月1日、積極的勧奨再開に向けての審議がなされた。当弁護団は、この部会での審議の不当性について声明を出し、多くの議員に呼び掛けた院内集会を緊急に開催した。

 副反応検討部会では、①安全性について、現時点において、HPVワクチン接種後に生じた症状とワクチンとの関連性を示唆するエビデンスは認められなかった。②有効性について、HPVの感染やそれによる子宮頸部異形成の予防効果が示され、さらに、近年、海外の大規模調査において、子宮頸がんの予防効果も示された。③HPVワクチン接種後に生じた症状に苦しんでいる患者については、「寄り添った支援」がなされているという報告が厚労省からなされた。冒頭で、委員の一人が、全身疼痛の原因は、ワクチン接種による痛みや不安から生じるものであって、ワクチンに含まれている物質によるものではないし、免疫によるものでもないというのがこれまでの当部会の結論であると総括した。こうした報告、総括に、異議を唱える委員はいなかった。これが、専門家の委員によって構成された副反応検討部会での議論の実態である。

 これまでに公表されているHPVワクチン接種後の多様な症状が免疫介在性の神経障害であるとする多数の査読論文は資料として提示されることはなかった。子宮頸がんは、検診によって安全に予防できることが実証されていることも何ら検討されなかった。子宮頸がんの予防効果が示されたという海外の大規模調査についても、子宮頸がん患者の1.5%程度の割合にしか過ぎない30歳までの女性を対象にした調査であり、むしろ、接種率の高いイギリス等では、ワクチン非接種世代では子宮頸がんが減少しているにもかかわらず、接種世代では増えている傾向があるといったことは、全く指摘されなかった。「寄り添った支援」がなされているという厚労省からの報告については、患者からその実態を聴き取ろうという姿勢さえも示されなかった。

 今、改めて、40年以上前の福岡スモン判決が示した「有用性の判断は、有効性の認定に際しては厳格に、副作用の発見可能性の認定に際しては緩やかに判断された上でのバランス論でなければならない。」という啓示を再認識しなければならない。特に、健康な人に投与されるワクチンにおいてはなおさらのことである。

※本稿脱稿後の11月12日の副反応検討部会は積極的勧奨再開が妥当であるとの結論をまとめた。

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