No.16 (2003-02-01)
1 独立行政法人医薬品医療機器総合機構法とは
この法案は、それまで医薬品による健康被害救済業務と医薬品開発振興業務を行っていた「認可法人医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構」と、審査業務等の一部を行っていた「国立医薬品食品衛生研究所医療機器審査センター」「財団法人医療機器センター」の3つを一つにして独立行政法人化し、あわせて、それまで厚生労働省医薬局安全対策課が行ってきた安全対策業務などもこの独立行政法人に統合してしまおうという法律です。
小泉内閣は、行政構造改革の中で、不必要・不効率な業務、巨額の国庫負担、天下りの温床など弊害指摘されてきた「特殊法人」改革を主要課題として掲げ、平成13年12月に「特殊法人等整理合理化計画」を閣議決定しました。その一貫として昨年の臨時国会に提出されたのがこの「独立行政法人医薬品医療機器総合機構法案」だったのです。
2 法案の問題点
しかし、もともと医薬品の審査、安全対策、被害救済等の業務は、国民の健康を守る立場から「国が行うべき」業務であり、不必要、不効率な業務を整理縮小して国の手から切り離そうという特殊法人改革とは本質的に相容れないものです。
それだけでなく、法案は、 独立行政法人に製薬企業の関係者を採用することを予定しており、資金的にも製薬企業への依存を強める内容となっていました。そして、このような組織において、薬害エイズの教訓によって、引き離した研究開発振興と安全対策を再び同じ組織で行おうというのですから、過去の教訓を無にする「薬害促進法案」ともいうべきものでした。
3 法案に対する反対運動
この法案に対し、薬害オンブズパースンは、全国薬害被害者連絡協議会(略称「薬被連」)の方々やTIP(医薬品治療研究会)・JIP(医薬ビジランス研究所)等とともに、この法案に対する反対運動に取り組みました。
2002年11月14日に「緊急要望書」を内閣総理大臣、厚生労働大臣等に提出したのを皮切りに、国会内集会や、国会でのロビー活動や、厚生労働省や街頭でリレートークとビラまきを行った他、12月2日には、当会議のメンバーで医薬ビジランス研究所の浜六郎氏が参議院厚生労働委員会の参考人として意見を述べました。また、この法案は迅速承認を実現するというふれこみでしたが、それを先取りする形で世界に先駆けて申請から5ヶ月余りで承認(通常は1年かかる)した抗ガン剤イレッサについて、被害者とともに記者会見を行って法案の問題性等を指摘し、イレッサ110番を開設するなどしました。
結局、法案は与党の賛成に衆参両院ともに通過してしまいましたが、運動の成果として、厚生労働省から研究振興開発部門の切り離しや製薬企業からの役職員の採用の規制等を内容とする「整理」(国会答弁)や、参議院決議を得、さらには、厚生労働大臣と薬被連の面談(12月26日実施)を実現し、新法人の諮問機関に薬害被害者をメンバーとして参加させる約束を得ました。法案の具体化はこれからですので、薬害被害者やTIP、JIPと連帯して監視し続けるとともに、政策提言をしていきたいと思います。是非ご支援を御願い致します。