No.52 (2016-07-01)
2016年3月に、薬害エイズ訴訟和解20周年の記念式典があり、参加してきました。その集会で、訴訟の原告だった川田龍平議員が来賓として挨拶をし、「訴訟の当時は10代で、和解20周年の集会で、国会議員となった自分が来賓として挨拶するなどとは夢にも思わなかった。あの頃は、仲間が次々と亡くなり、自分も長くは生きられないと思っていた。」「薬で被害に遭ったが、医療と薬の進歩によって今がある。」と述べ、訴訟の成果としての恒久対策の意義と薬害再発防止への期待を語りました。
1989年に提訴された薬害エイズ訴訟は、この年に弁護士になった私が初めて参加した薬害集団訴訟です。原告団・弁護団はこの訴訟を「生きるための訴訟」と位置づけました。そして、賠償はもとより、治療薬の開発や医療体制の整備などの恒久対策、真相の究明と薬害再発防止を訴訟の目的に掲げて闘い、企業と国の責任を明確にした「確認書」の締結により、目的実現のための約束をとりつけたのです。損害賠償請求訴訟として提起はするが、賠償金の獲得だけに終わらないというこのスタイルは、サリドマイド事件以来被害者や弁護団が努力を重ねて築いてきた日本の薬害集団訴訟の大きな特色です。それだけに、川田議員の挨拶は大変感慨深いものでした。
「確認書」に基づいて設置されたブロック拠点病院に関する医療協議や、そのときどきの恒久対策や薬害防止の課題を厚生労働大臣出席の下で原告団と厚生労働省が協議する「大臣協議」は、和解成立から20年経った今も続いています。薬害被害者が高齢化することによって生じる新たな問題も多く、協議すべき課題は尽きません。そして、そのことを知れば知るほど、薬害は起こしてはいけないと思わずにはいられません。
薬害オンブズパースンが取り組んできたHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)による被害についても集団訴訟が始まります。真の救済と薬害再発防止のため、当会議では、この訴訟を全面的に支えていきたいと考えています。