No.51 (2016-03-01)
1 230名の参加
2015年11月23日、薬害オンブズパースン会議、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会、国民の医薬シンポジウム実行委員会の共催によるシンポジウム「 『子宮頸がんワクチン』問題を考える ―海外からの報告を踏まえて―」が、東京大学の鉄門記念講堂で開催され、合計230名が参加しました。
2 第1部 基調講演
第1部では、デンマークのLouise Brinth医師(Frederiksberg 病院)、西岡久寿樹教授(東京医科大学医学総合研究所所長)、横田俊平名誉教授(横浜市立大学)が講演をされました。
(1)ルイーセ(Louise)医師は、デ ンマークで300人のHPV副反応被害者を診察し、POTS(体位性起立性頻脈症候群)に注目し論文を公表しています。同医師は、デンマークで、2009年から2015年までの間に1586の副反応報告があり、うち重篤な副反応が543であることなどを紹介したうえで、患者の症状について、多い順に起立性調節障害、嘔気、頭痛、疲労、動悸、認知障害、皮膚病変、体節性ジストニア、神経障害性疼痛、睡眠障害、筋力低下と多彩であったことを示して、公表論文を順次説明し、日本とデンマークの共同研究の必要性を指摘しました。
(2)西岡医師は、HPVワクチンの副反応を、自律神経系・内分泌系の障害、認知機能・情動の障害、感覚系の障害、運動器の障害等が重層的、時系列的に発現し、増悪を繰り返す「HPVワクチン接種と関連した亜急性に重層化する臨床スペクトルを呈する新たな病態」と定義し、「HANS」という一つの症候群としてとらえることの必要性を指摘しました。そして、HPVワクチンの副反応を既存疾患としてとらえようとする「疫学研究」は意味をなさないとして、EMAのレポートの問題性を指摘しました。
(3)横田医師は、難病治療研究振興財団による88名の副反応被害者の解析とその症候学的検討に基づき、主たる責任病巣として視床下部が推定されることなどを紹介しました。また、症例がHPVワクチン接種後から出現していること、若年女性だけで男性にはいないこと、何よりも一群の症状は重層化し、一つの症候群を形成し、それが多くの症例に当てはまること等から、HANSとHPVワクチンの因果関係は臨床的に明白であると指摘しました。
3 第2部 被害実態報告
第2部では、まず、日本から、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会の池田としえ氏が、ビデオ等を用い被害の深刻さを紹介するとともに、2015年11月末現在、13支部、460人の登録者数をもつ連絡会の活発な活動を紹介しました。そして、海外からは、デンマークとイギリスから被害者と家族ら8名が、ビデオレターで被害を語りました。
4 第3部 パネルディスカッション
第3部では、第1部の講演者に、当会議のメンバーで神経内科医の別府宏圀医師、産婦人科医の打出喜義医師、被害者連絡会代表の松藤美香氏、被害者本人の酒井七海氏がシンポジストに加わり、当会議メンバーの隈本邦彦、事務局長の水口真寿美の司会のもとに進行しました。
冒頭、車椅子で登壇した酒井七海氏は、被害に遭って進路を変更せざるを得なくなったことなど話し、第2部のビデオレターから、被害実態が日本も海外も同じであると分かったと述べました。
続いて、打出氏は、HPVウイルスに感染しても、子宮頸がんにまで進展するのはそのごく一部にすぎないこと、HPVワクチンは、子宮頸がんではなく、CIN2、CIN3(前がん状態である異形成)の減少をもって有効性がありとされているが、これらは有効性の評価の指標としては信頼性が低いこと、子宮頸がん死の有効な予防手段は早期発見早期治療であること等を指摘しました。
別府氏はHPVワクチン推進派の人々は、相対リスクを用い、HPVワクチンは人々が前がん状態(CIN2/3)になるのを98〜100パーセント防ぐと主張しているが、絶対リスクでは、わずか0.7%減らせるだけのことであると指摘しました。
隈本氏は、HPVワクチンの副反応のように発生頻度が低い場合に、多様な副反応を、症状毎に分断して接種者と非接種者を比較すると、実際には差があっても、差がないという疫学的データが出てしまうしくみについて説明しました。
松藤氏からは、接種時に危険性や有効性についての説明がほとんどなかったことの指摘がありました。 その後は会場とのディスカッションとなり、WHOの利益相反の問題などが論点となりました。
5 おわりに
4時間以上に及んだシンポジウムは、HPVワクチンをめぐる問題を、多角的に検討する充実したものとなりました。参加者の皆さま、ありがとうございました。