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 「薬害」とは「医薬品の副作用」とは異なり、社会的に容認できない医薬品被害である。  薬害被害者の救済と医薬品の安全性確立のための薬害訴訟の歴史は、サリドマイドに始まる。その後、キノホルム(スモン)、クロロキン、血液製剤によるエイズ、ヒト乾燥硬膜(ヤコブ)、血液製剤による肝炎、イレッサと続き、クロロキンとイレッサを除く五事件において、製薬企業と国による薬害再発防止の誓約が繰り返されてきた。

 そして、サリドマイドで承認制度の見直し及び再評価制度が、スモンで薬事法改正による厚生大臣の権限強化や再審査制度が、エイズで市販後安全対策や「誓いの碑」の建立が、ヤコブで生物製剤の規制強化が、肝炎で医薬品の安全対策が総合的に見直され、医薬品リスク管理計画等の実施がなされた。厚労省の敷地内に建立された「誓いの碑」には「命の尊さを心に刻みサリドマイド、スモン、HIV感染のような医薬品による悲惨な被害を再び発生させることのないよう医薬品の安全性・有効性の確保に最善の努力を重ねていくことをここに銘記する」とされたが、未だ医薬品の安全性は確立していない。

 訴訟終了後も原告団の活動は続き、1999年には11の原告団・被害者団体によって「全国薬害被害者団体連絡協議会」(薬被連)が結成され、毎年「薬害根絶デー」「薬害根絶フォーラム」が開催され、更に文科省を動かして全国の大学医療系学部での薬害教育を推進している。

 薬害訴訟の解決と連動して、民間の医薬品監視団体として医薬品治療研究会、医薬ビジランスセンター、薬害オンブズパースン会議も発足した。

 しかし、日本の医薬品安全対策の課題は山積している。

 根本的問題は、製薬企業のマーケティング戦略に起因して、医薬品評価が歪められていることにある。この戦略は、資金等の提供による医薬専門家の抱き込みで、「病気づくり」や医薬品評価に影響を与えている。このマーケティング戦略と産官学の癒着を監視することが重要である。

 薬害肝炎事件の反省からの「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提言)」(2010年厚労省検討委員会)に基づく、医薬品行政の評価監視のための第三者組織の創設を始めとする様々な課題の法整備が遅れている。

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