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 高血圧治療薬ディオバンに関し、薬害オンブズパースン会議は、2013年11月1日、ノバルティス ファーマ株式会社(ノ社)を、薬事法違反及び不正競争防止法違反により、刑事告発しました。

 この事件は、臨床試験の不正と企業の宣伝が密接にリンクした事件です。京都府立医科大学などの5つの大学は、ノ社の奨学寄付金を資金とした市販後の臨床試験を実施し、他剤に比べて脳卒中などを減らす効果があるという結果を得て、海外の著名な医学雑誌に発表、ノ社はこれを販促に利用し、同薬は大ヒット商品となりました。しかし、ディオバンに有利になるよう血圧値等のデータが操作されていたこと等が発覚、臨床試験の統計解析等にノ社の社員が関与していたことも明らかになっています。

 この事件は、被験者の権利を侵害し、日本の臨床試験の信用を揺るがす重大事件です。そこで、各大学には調査委員会、さらに厚生労働省にも検討会が設置されましたが、データ操作へのノ社社員の関与等の真相の究明には至っていません。日本では薬事承認を得るための治験のみが法的規制を受け、それ以外の臨床試験はガイドラインで管理しているため、臨床試験の不正に関して強制力をもって調査を行うことはできないからです。

 そこで、不正な臨床試験の結果を利用して虚偽誇大な広告を行った点をとらえて、薬事法の広告規制違反と不正競争防止法違反により、刑事告発しました。

 ノ社によれば広告は495種類とのことですが、告発はあくまで「捜査の端緒」つまり、捜査のきっかけをつくればよいのですから、京都府立医科大学の臨床試験に関して、「日経メディカル」と「高血圧ナビゲータ」の記事を告発しました。

 いずれも医師の対談記事の形式をとった宣伝です。このような広告形態は、ディオバンに限らず広く利用されています。薬害イレッサ事件でも、医師の対談記事によって副作用が少ない抗がん剤という虚偽の宣伝がなされ、全国薬害被害者団体連絡協議会は薬事法違反でアストラゼネカ社を告発しています。このとき、検察から問い合わせを受けた厚労省は、対談記事は「学術情報の提供」であり薬事法上の「広告」に該当しないと回答しました。しかし、ディオバン事件では、対談記事も「広告」となることを認めています。

 いずれにしても、このような宣伝を可能にしているのは産学の不健全な利益相反関係です。告発は、医薬品の宣伝活動のあり方だけではなく、産学の関係や臨床試験のあり方についても問題を提起しているのです。

 厚労省も、本年1月9日、ようやく告発状を提出しています。

 検察が、この事件の重大性にふさわしい捜査体制を組み、厳正な捜査を遂げて、真実が解明されることに期待します。

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