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 先日、社内で「トラブル事例から学ぶ」というテーマで職員研修会をおこなった。それぞれの薬局で経験した過去の教訓的な事例をもとに、あらかじめシナリオを作成した。小グループで薬剤師役、事務役、そして患者役を決め、ロールプレイを行い、待合の客役が評価し、ディスカッションするというもの。ロールプレイはビデオ撮影した。シナリオは、いずれもシビアな事例で、患者役は、この時とばかりに、薬剤師役をたじたじにさせる名優ぶりであった。

 シナリオの内容は、咳が続くために、市販の咳止めを買って1週間飲んでも止まらず、受診した結果、医師から「薬による副作用の可能性がある」と言われ、薬局では何も説明を受けなかったと、咳に悩まされた1週間の腹立たしさをぶつけられた事例、間違った規格の薬を渡してしまい、その後の電話によるやり取りで理解の食い違いが発生し、患者さんを怒らせてしまった事例、保険証の取り扱い上のトラブル事例などであった。

 過誤や、伝えるべき情報が伝えられていなかったことなどはそのこと自体が問題で、実務上で徹底しなければならないが、トラブル事例の多くは、それらへの対処の過程で、患者さんの感情を害したり、不信感を募らせてしまうことにある。

 事例に共通しているのは、こちらの間違いや不手際に対する不適切な対応が誘因となっていたことである。薬の間違いを、健康上は問題ないと判断しがちであり態度に反映することもある。個人情報においてもしかりで、医療現場では、情報のほとんどが個人情報であり、日常の取り扱いをトレーニングしないと、トラブルにつながる。

 シナリオの中の対話で、「患者の健康に責任を持とうとする気がないんだろう」という患者役のせりふがあった。実際の事例に基づいたものだが、このせりふがすべてを物語っているように思う。専門家と呼ばれる立場の人間が、どれだけ患者の利益に立ち返って、日常の対応に努めることができるかが問われている。同じせりふを、厚生労働省にも突きつけたい。

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