No.38 (2011-11-01)
アクトス(塩酸ピオグリタゾン塩酸塩製剤)は、武田薬品工業が開発した糖尿病薬です。2009年度の企業推計によれば、国内で年間132万人が使用しています。
本年、米国とフランスの疫学研究によって、アクトスが膀胱がんのリスクを増加させることが報告されました。この報告に基づき、フランスとドイツは、新規患者投与禁止措置をとりました。一方、欧州医薬品庁(EMA)と米国FDAは、新規患者投与禁止とはせず、添付文書改訂により膀胱がん患者への使用を禁じる等の措置をとりました。
これに対し、日本の厚生労働省は、2011年6月、膀胱がん治療中の患者等にはアクトスの使用を避けること等の添付文書改訂を指示するにとどまり、新規患者への投与を禁止することも、膀胱がん患者への投与を禁忌とすることもしませんでした。そして、厚生労働省の安全対策調査会の翌日には、後発品が多数薬価収載されています。
しかし、アクトスは、危険性を上回る有効性がなく、販売中止とするべきです。そもそも糖尿病治療の最終的な目的は、心筋梗塞や脳卒中などを抑制し合併症を減少させることです。血糖値の低下はあくまで代理の有効性評価指標に過ぎません。ところが、アクトスの合併症の減少効果は、証明されていないのです。一方で、アクトスには、重大な心毒性リスク、膀胱がんリスク等があります。膀胱がんリスクは、承認時から動物実験で示されており、当会議は、これらのリスクを踏まえ2000年に販売中止を求めていました。この度の疫学研究の結果、安全性と有効性のバランスを失していることはより明確になりました。そこで、当会議は、本年9月29日、厚生労働省、武田薬品工業、および後発品の製造販売企業他に対し、改めてアクトスとその後発品の販売中止を求める要望書を提出しました。
要望書では、本問題を討議した厚生労働省の薬事食品衛生審議会医薬品等安全対策調査会の利益相反管理の問題点についても触れています。
※ なお、現在アクトス及びその後発品を使用中の方は、必ず主治医とよく相談したうえで対応することが必要です。