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 薬害オンブズパースン会議創立十周年記念シンポジウムの開催前日、今回招聘した二人のゲスト・スピーカー、ピーター・ルーリ医師(パブリック・シチズン)とクリストフ・コップ医師 (レビュー・プレスクリル誌編集委員)を囲んで意見交換会がもたれた。会議は13時に始まり、ラウンドテーブル形式で約4時間半におよぶ活発な質疑・討論が展開され、薬害オンブズパースン会議メンバー13人を含めて約30人が参加した。
 会議では、まず水口真寿美事務局長から薬害オンブズパースン会議の発足からの経緯とこれまでの活動状況が報告され、いま日本の薬務行政は大きな変換点を迎えており、その意味でも米国や欧州との情報交換や連携活動が必要なことが述べられた。
 これに次いで、ルーリ医師からは、パブリック・シチズン(PC)の活動と米国の抱える問題点について説明があった。PCは1970年にラルフ・ネーダーが立ち上げた市民団体の1部門であり、全体では約90人のスタッフを抱えているが、ヘルスグループだけに限れば、8〜10人の比較的小さな組織である。扱う問題は、医薬品だけでなく、環境汚染や医療供給システムに関する問題点の指摘、調査・ロビー活動など、広く健康に関わる問題を取り扱っている。政府に対する情報の透明性や説明責任を問う訴訟を起こしたり、請願権の行使などを通じて、構造的なアプローチで政策レベルへの働きかけを行うこがうことが効果的であるという発表があった。
 コップ医師からは、フランス最大の独立医薬品情報誌(レビュー・プレスクリール:以下RP誌)の編集・教育活動の紹介や国・EUの規制当局に対する調査・ロビー活動についての報告があった。RP誌は1981年に創刊され、現在3万人の購読者を抱えており、これはフランス全体の医療専門家の2〜3割をカバーする影響力をもっている。現在最重要課題として取り組んでいるのは、EUにおける対消費者直接広告(DTC広告)の導入と、副作用監視活動を製薬企業側に委ねようという動きであり、これらの動きが加速すれば、日本でもそれに抗することは難しくなるに相違ないという指摘があった。
 会議の後半では、これら3人の発表に対して、参加者各自からさまざまな質問やコメントが交わされ、日・米・欧の3つの地域に共通する課題と相互に協力することの重要性が強く認識された。                     

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