No.27 (2007-08-01)
2007年6月16日, 厚生労働省(厚労省)は、日本でタミフルの販売を開始して以来07年5月31日までに1377人の害反応(副作用)の報告を受けたと発表。うち567人は重篤な精神神経系症状で、211人が異常行動を伴うものであった。厚労省が報告したタミフル服用後の「副作用死亡数」は71人。これらを報告した医師は「おそらく関連あり」、「関連があるかもしれない」、あるいは、少なくとも「関連が否定できない」としているのだが、厚労省は、4例を除いてすべて「否定的」とし、事実上因果関係を否定している。「否定できない」とされた4例は、中毒性表皮壊死症(TEN)や多臓器不全、アナフィラキシー(じつはこの例は「突然死」)、劇症肝炎であった。
このほか、71人に含まれない死亡例として、厚労省が「副作用」に分類せず有害事象死亡とした突然死が4人、私が独自に収集した突然死が5人いる。
合計80人の死亡者中、50人が突然死あるいは突然の心肺停止による死亡である(10歳未満が18人、32人は20歳以上:10代はなし)。また、8人は異常行動から事故死した(5人が10代、3人は20歳以上)。これら58人の突然死や異常行動からの事故死の因果関係の認識は、報告した医師(少なくとも「関連が否定できない」)と厚労省(すべて「否定的」)で完全に異なっている。
本年2月に連続して2人が異常行動の後に事故死してもなお、因果関係を否定し続けていたが、因果関係の研究を担当していた責任医師がタミフルのメーカー(中外)から1000万円にのぼる寄付金を受けていたことが発覚し、また、因果関係を否定したまま10代に対して原則禁止を打ち出すという厚生労働省の矛盾した対応に批判が集中し、因果関係の再検討を約束せざるを得なくなった。
これまでに判明しているタミフルによる重篤な害は大きく分けて、1)タミフルそのもの(オセルタミビル) の中枢抑制作用(睡眠剤や麻酔剤に似た作用で意識もうろうとなり呼吸が止まる)によると思われる即時型反応で、突然死や、異常行動など急性の精神症状が起きる、2) 抗ウイルス活性を有するタミフル によると思われる遅発型の反応で、肺炎、敗血症、高血糖、出血など、3) その他(重症薬疹などアレルギー反応、ほか)に分類することができる。
副作用としての救済申請していた4家族は、すべてタミフルによる被害とは認定されず、いまだに因果関係が否定されたままである。スモン薬害の和解の後で、裁判によらず早期救済をとの趣旨で設けられた副作用被害救済制度であるにもかかわらず、因果関係のハードルが極めて高い。全くその趣旨を踏みにじるような因果関係の否定に被害者は強く怒りを覚え、薬害タミフル脳症被害者の会を結成し、2年目の活動に入った。
因果関係究明のための作業部会が作られ再検討が開始されたが、健康人に対するランダム化比較試験で脳波を検討するとの無意味な試験を計画し、その一方、一旦実施を決めていた感染実験(因果関係の断定に決定的に重要な動物実験)を外すといった不思議な行動からして、因果関係を厚生労働省がみとめるのはなお厳しい道のりであるように思えるが、すでにこれまでのデータから、突然死や異常行動死との因果関係は明らかである。必ずや因果関係が認められる日がくると私は確信している。全年齢でタミフルの使用は禁止すべきと考える。(医薬ビジランスセンター・薬のチェック)