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欧米では,現在,製薬企業と研究者との経済的関係(「利益相反」)に関する議論が盛んに行われています。研究者が製薬企業との経済的関係を持つと,研究に対する不当な影響が懸念されるからです。実際にアメリカでは,カルシウム拮抗剤の効能調査で肯定的に評価した研究者の96%が対象企業と経済的関係のあることが論文で指摘されています。
 そのため,ヘルシンキ宣言等では臨床研究者等に対して経済的関係の公表を要求し,各種医学雑誌でも執筆者と製薬企業との経済的関係の公表が強く要求されます。また,EMEA(欧州医薬品庁)は意見を求める専門家と諮問委員会メンバーについて,「利益相反」の程度に応じて,EMEAの活動に関与できる範囲を決定するシステムを導入しています。こうした動きについては,当会議ホームページの「注目情報」をご覧下さい。
 さて,日本ではどうでしょうか?イレッサ(ゲフィチニブ)の例にとれば,お寒い状況がわかります。
 05年3月に,「ゲフィチニブ使用に関するガイドライン」が作成されました。これは,イレッサが02年7月の承認・販売直後から間質性肺炎などの急性肺障害による副作用死が多発している事態を受けて,厚生労働省からの要請により日本肺癌学会が作成したものです。厚生労働省がわざわざ特定の医薬品に関してガイドラインの作成を学会に依頼し,ガイドラインを参考にする旨の添付文書への記載が使用継続の条件となるなど,国民の生命・健康の見地から高い公共性を有します。
 ところが,このガイドライン作成委員会の医師の半数がイレッサの治験に関与した医師で占められており、イレッサは副作用の少ない安全な薬だするアストラゼネカ社提供の記事に登場した医師,イレッサの緊急安全性情報が出された後にアストラゼネカ社が設置した専門家会議のメンバーとなった医師など、アストラゼネカ社の調査・研究活動に関与し,経済的に支援している企画に専門家として関与しています。ガイドラインの公正さが疑われます。当会議ではこれまで,2度,日本肺癌学会に対して,ガイドラインの作成に関与した医師とアストラゼネカ社との経済的関係の有無及び内容等について質問をしました。しかし,経済的関係を明らかにする必要性はないとの回答が寄せられています。この経緯も当会議のホームページをご覧ください。
 このようなことがまかり通っている原因は,製薬企業と研究者との経済的関係について,適正な規制がなされておらず,現場の裁量に任せたままにしているからです。
 そこで,当会議では,年内にこのような経済的関係に関する意見書を作成し,製薬企業と研究者との経済的関係の規制(情報公開,関与制限等)を求めます。

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