No.25 (2006-11-01)
インフルエンザの「特効薬」と喧伝されているタミフル。
わが国では中外製薬が親会社のロシュから輸入販売しているが、全生産量の7割がわが国で使用され、2005年の国内売上高は352億円といわれている。
このタミフルが原因と思われる異常行動で1人の少年が亡くなった。高校2年生の男子。タミフル服用後、雪が降り積もる道を裸足で駆け抜け、80センチのフェンスを越え、国道に飛び降りトラックにはねられた。少年は当日タミフルを処方され、服用後4時間後に起きた事件であった。周囲は自殺ではないかと噂したが、少年はバスケットボール部に所属し、快活な性格で家族は自殺する理由は思い当たらない。そこで、家族は少年の死の真相を知ろうと調査を始めた。そして、タミフルの服用で異常行動を起こす可能性があることを突きとめる。しかし、服用当時、添付文書には幻覚・異常行動等の副作用は記載されていなかった。
少年の死はタミフルの副作用が原因と考えた家族は、昨年独立行政法人医薬品医療機器総合機構に対し遺族一時金等の請求を行った。請求の過程で息子と同じ様にタミフルを服用し異常行動をとってマンションから墜落死した別の少年の存在を知る。家族は少年の両親に連絡し、同じ悲劇が繰り返されていることに驚く。そして、同様の事故を防ぐためには、機構がタミフルと死亡との因果関係を認めることが必要であると、濱六郎医師の詳細な意見書等も資料として提出。タミフルと死亡との因果関係が認められるものと確信していた。ところが、機構は「他剤による自殺企図」という理由で、本年7月5日、タミフルと死亡との因果関係を否定した。また、同じ日、他に請求を行っていた3家族についても「原因不明」等の理由で不支給決定が下された。
少年の死後、添付文書の「重大な副作用」の項目には、「精神・神経症状」との記載が加わり、具体例として異常行動や意識障害が列挙されているにもかかわらず・・・。
これらの機構の決定を受け、請求が認められなかったタミフル被害者関係者が連絡を取り合い、薬害タミフル脳症被害者の会を立ち上げた。
会員の思いは、タミフルによる異常行動等の副作用が広く認識され、同様の被害が繰り返されないことにある。実際、異常行動については、家族が不穏状態をいち早く察知して飛び降りを止めたケースが存在し、十分に警告されれば悲劇は未然に防ぎうるのである。
4家族は8月下旬、厚生労働大臣に対する審査申し立てを行ったが、制度の現状からすると不支給決定が取り消される可能性は低く、行政訴訟に発展することが予想される。
一方で、新薬承認に関する資料を情報公開法に基づき請求する等しており、今後製薬会社の警告義務違反等についても検討する必要がある。
本件に関与している弁護士は現時点では限られているが、被害者支援のため弁護士によるサポートが必要であり、1人でも多くの弁護士の協力をお願いしたい。