No.24 (2006-06-01)
最近出版された「ビック・ファーマ 製薬会社の真実」が話題を呼んでいます。著者は医学雑誌NEJMの前編集長マーシャ・エンジェル氏。文字通り製薬会社の真実が語られています。「いかさま」という言葉が随所にでてくるのが印象的なとても読みやすい本ですが、参考文献欄の充実が著者の長年の活動に根ざしたこの本の奥行きを物語っています。一昨年シンポジウムにお招きし、機関誌でもご紹介したたチャールズ・メダワー氏の名著「暴走するクスリ」とともに一読をお勧めします。
さて、さる3月で薬害エイズ事件の和解成立から10年となりました。「産学の連携」という言葉が闊歩し、製薬企業と大学や医療センターは製薬会社の「パートナー」なのだと公然と宣言する時代になっています。しかも、製薬業界は薬害エイズ事件の頃よりずっと成長し、その潤沢な資金を背景に研究者、学会に対する支援を営業戦略の中に積極的に位置づけています。経済的な関係が強まればバイアスがかかることは実証済みですが、利益が相反する場面での実効性のあるルールは確立していません。
同じ問題が産官の間にもあります。検討会を開催して政策を決めるという手法が定着しています。延命効果がないという結果を受けてイレッサをどうするかを検討するために厚生労働省が招集したゲフィチニブ検討会では、検討会のスケジュールにあわせて作成された肺がん学会のガイドラインが検討会の結論に取り込まれ、このガイドラインに沿って使用をすればよいということになりました。しかし、この検討会委員とアストラゼネカ社との経済的な関係、そして肺がん学会のガイドライン起草委員と同社との関係は何も明らかにされていないのです。当会議ではこの問題について意見書を公表し、肺がん学会に対しては公開質問書を送りましたが、回答の必要なしという回答でしたので、再質問書を提出しました。利益相反問題に拘っていきたいと思います。