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「Tポイントサービスに関する要望書」を提出 / 回答書受領

2012-11-20

 薬害オンブズパースン会議は、2012年11月20日、Tポイントサービスの運営主体であり、TSUTAYAを展開しているカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)、医薬品販売業者(ドラッグストア)としてTポイントの加盟店(ポイントプログラム参加企業)となっている5社、および個人情報保護法違反企業に対して勧告・命令・指導権限を有する厚生労働大臣、経済産業大臣、内閣府特命担当大臣(消費者庁)、消費者委員会に対し、「Tポイントサービスに関する要望書」を提出しました。

  約4093万人の会員が利用する日本最大の共通ポイントサービスであるTポイントサービスにおいては、Tカード提示時に会員が購入した商品名等の個人情報は、
 ①会員が商品購入等をした当該加盟店からCCCへ提供される
 ②当該会員の個人情報はCCCと(当該商品購入加盟店ではない他の)各加盟店間で営業案内等のため使用することが可能である
 ③会員が会員登録をした段階では加盟店ではなかった(後に参加した)加盟店にも当該会員の個人情報が以後提供され得る
といったしくみとなっています。

  そして、会員が医薬品を購入した場合に、①②③のしくみで送信され、使用される個人情報は、当該会員が購入した医薬品の「商品名」と「代金」のようです(CCCにおいて会員の氏名、年齢、性別等が特定可能です。)。

 しかし、そのような①②③のしくみ自体、また、医薬品を購入した場合の情報の扱いについて、会員はその全貌を十分に理解していません。
 特に、医薬品情報(医薬品の購入歴)は、患者のプライバシー権保護という観点からも、高度な法的保護を受けることから問題であり、法解釈上、刑法及び個人情報保護法に抵触し得ます。

 具体的には、第1に、ドラッグストアが患者の医薬品情報をCCCに提供する行為(①)は、医薬品情報を扱う「薬剤師」や「医薬品販売業者」が業務上知った秘密(患者の医薬品情報等)を漏らしたとして、刑法(134条、秘密漏示罪)に抵触する可能性があります。

 第2に、会員が十分に理解しないまま、会員の個人情報を第三者である加盟店との間で利用する行為(②③)は、個人情報保護法(23条1項)に抵触します。

 そこで、当会議は、CCCおよび医薬品販売業者に対しては、医薬品購入歴情報の抹消および加盟店契約自体の解消等を、各担当大臣に対してはCCCおよび医薬品販売業者たる加盟店がかかる情報抹消と加盟店契約解消等を行うよう勧告・命令・指導するよう、要望書を提出しました。

<CCCほか医薬品販売業者からの回答書受領>

  当会議の要望書に対して、2012年12月10日付でCCCから、また、同12月中の日付で医薬品販売業者各5社から、回答書が届きました。
  しかし、回答書はいずれも、Tポイントサービスが「個人情報保護法及び刑法に何ら違反するものではなく」、「T会員のプライバシー権を侵害する行為を一切行っていないものと確信しております。」というように(CCCの回答書)、結論のみを抽象的に述べる、わずか1枚のものです。
  このCCCの回答書には、CCCが委任した弁護士作成の意見書(以下「意見書」)が添付されていますが、当会議(の代表者)「限りとして取り扱って頂く前提で、写しを送付させて頂いておりますので、この点、ご留意ください」と記載して公開に制限を付しています。
  しかも、意見書の概要は次のとおりであり、以下の問題点があり失当です。

<回答書添付の意見書の概要>

1 意見書は次の2点を「検討事項」にして、検討している。
ⅰ 加盟店がCCCに対してT会員の個人情報を提供することは個人情報保護法に違反しないか
ⅱ 加盟店である医薬品販売業者がCCCに対してT会員の医薬品情報を提供することは刑法(134条、秘密漏示罪)に違反しないか

2  意見書は、検討の「前提事実」として、「T会員は、Tカードの発行を受けるにあたり、『T会員規約』の内容を確認し、同意している。」という事実、CCCが「加盟店に対して提供する個人情報には、ドラッグストア等から提供を受けた医薬品の購入情報は含まれていない。」という事実ほか、合計7項目にわたる事実を挙げている。

3  意見書は、1点目の「検討事項」のⅰについて、T会員規約(個人情報の相互利用につき同意みなし規定等あり)の存在およびTカードの提示行為等を理由に、会員の同意があったことは「社会通念上明らか」と解釈し、個人情報保護法に「基本的には」違反しないと結論付けている。

4  意見書は、2点目の「検討事項」であるⅱについて、本件医薬品(「一般用医薬品」および「処方せん医薬品」等のいずれも)の購入情報は刑法134条所定の「秘密」に該当しないとし、また、1点目と同様に、T会員規約の存在(個人情報の相互利用につき同意みなし規定等あり)およびTカードの提示行為等を理由に、「社会通念上」秘密漏示罪の「成立阻却事由」である「承諾」(同意)があったと解することが合理的として、これらを踏まえ、刑法には「基本的には」違反しないと結論付けている。

<回答書添付の意見書の問題点>

1  実態調査を行わず問題点に全く答えていないこと
当会議の要望書は、Tポイントサービスの上記①②③のしくみ自体や、 医薬品を購入した場合の情報の扱いについて、「会員がその全貌を十分に理解していないこと」を問題視しているのに対して、意見書ではその点に全く触れずに、形式的なT会員規約の存在およびTカードの提示行為等を理由に会員の同意(承諾)があったと解釈している。
  本件の最大の問題点は、「会員がその全貌を十分に理解していないのではないか」、そのため、形式的なT会員規約の存在及びTカードの提示行為をもって、「同意」あるいは「承諾」があったはいえないのではないかという点である。
  ところが、意見書は、Tポイントサービスの上記①②③のしくみ自体や、医薬品を購入した場合の情報の扱いについて、「会員がその全貌を十分に理解しているか」について、実態の調査を全くおこなわずに形式的な解釈により結論を述べているに過ぎず、当会議の問題点の指摘と全く対応していない。
  なお、意見書では、弁護士らが「真実性・正確性について独自に調査又は確認を行ったものではない点につき留意されたい。」と限定を付している「前提事実」に、「T会員は、Tカードの発行を受けるにあたり、『T会員規約』の内容を確認し、同意している。」という事実を挙げているが、真に「同意している」かどうかが最大の問題点であるのに、このような「前提事実」を設定すること自体そもそも不適切である。

2 真実かどうか不明の「前提事実」を「前提」としていること
  弁護士らが意見を述べる「前提事実」としている7項目の事実には、例えば、CCCが「加盟店に対して提供する個人情報には、ドラッグストア等から提供を受けた医薬品の購入情報は含まれていない。」という事実など、いずれも本件問題点の検討にあたり重要な事実が挙げられている。
  しかし、これらの「前提事実」は、CCCらしか知り得ず客観的に確認不能な事実である。実際、上記のとおり、CCCの依拠する意見書を作成した弁護士らも、当該7項目にわたる「前提事実」については、「真実性・正確性について独自に調査又は確認を行ったものではない点につき留意されたい。」という限定を明記しているように、弁護士らが「独自に調査又は確認」をしておらず、「真実性・正確性」について保証できないことが、文字どおり「前提」となっている。
  このように、真実であるか不明である「前提事実」を「前提」にして作成された意見書は、意見自体の真実性も担保されず、説得性もない。

3 個人情報保護法違反の検討対象を誤っている
  個人情報保護法違反について(上記ⅰ)、当会議の要望書は、「CCCが」取得した会員の個人情報を第三者である「加盟店との間で」利用する行為(上記②③)を個人情報保護法違反として問題視しているのに対して、意見書は、誤って、その前提としての「加盟店が」会員の個人情報を「CCCに」提供する行為(上記①)について検討している(上記ⅰ)。
  このように、意見書は、当会議の問題意識と対応していない上、そもそも個人情報保護法の規制及びその対象(=個人情報取扱業者であるCCC)について正しく理解していない。

4 医薬品情報の重要性を理解していない
  意見書は、「一般用医薬品」および「処方せん医薬品」等、およそ本件の「医薬品」の購入情報は刑法134条で保護される「秘密」に該当しないとする。意見書が「一般用医薬品」の購入情報が「秘密」に該当しない理由は、「一般用医薬品」の購入情報は「『一般的にみて何人も他人に知られることを欲しない』情報とまではいえない」からというものであり、また、「処方せん医薬品」等の購入情報が「秘密」に該当しない理由は、「処方せん医薬品」の場合は、医薬品販売業者からCCCに提供される情報には(「一般用医薬品」の場合と異なり)「商品名」等が入っていないから、というものである。
  しかし、「処方せん医薬品」は、薬理作用の内容などから医師が診断に基づき処方すべき医薬品として厚労大臣が指定した医薬品で、「処方せん医薬品」か「一般用医薬品」かは、厚労大臣の指定によって変化し得るものであって、情報の重要性で区別されているものではない。
  何より、医薬品情報は、全般的に「一般的にみて何人も他人に知られることを欲しない」情報であり、「一般用医薬品」だからといって「『一般的にみて何人も他人に知られることを欲しない』情報とまではいえない」というのは誤りである(例えば、発毛剤、水虫・カンジダの薬、シラミ駆除薬など)。
  また、「処方せん医薬品」等については提供される情報に「商品名」が入っていないといっても(なお、この事実は、真実性等が担保されていない上記「前提事実」の1つである。)、購入頻度、購入店舗、購入金額が特定できる以上、ある程度の推測が可能であるから、「秘密」性を否定するのは誤りである。
  意見書では、医薬品情報の意味や重要性が理解されていない。

※ 本トピックスはCCC及び医薬品販売業者5社からの回答書受領に伴い、2013年2月14日に更新しました。

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