アクトス等について販売中止を求める意見書提出/回答書受領
2011-09-29
薬害オンブズパースン会議は、アクトス等(塩酸ピオグリタゾン塩酸塩製剤)について、販売中止を求める意見書を提出しました。
アクトスは、武田薬品工業が開発した糖尿病薬であり、2009年度の企業推計によれば、国内で年間132万人が使用しています。
本年、米国とフランスの疫学研究によって、アクトスが膀胱がんのリスクを増加させることが報告されました。
これに基づいて、フランスとドイツでは、新規患者投与禁止措置がとられ、フランスでは回収が行われています。一方、欧州医薬品庁(EMA)と米国FDAは、新規患者投与禁止の措置はとらず、添付文書改訂により膀胱がん患者への使用を禁じる等措置を指示しています。
日本の厚生労働省は、本年6月、薬事食品衛生審議会医薬品等安全対策調査会の検討結果に基づき、新規患者投与禁止とはせず、膀胱がん治療中の患者等にはアクトス等の使用を避けること(禁忌でない)等の添付文書改訂を指示しました。そして、安全対策調査会の翌日には、後発品が多数薬価収載されています。7月には、PMDAが報告書を公表しましたが、この対応を追認しています。
しかし、アクトス等は、危険性を上回る有効性がなく、販売中止とするべきです。
そもそも糖尿病治療の最終的な目的は、心筋梗塞や脳卒中などを抑制し合併症を減少させることです。血糖値の低下はあくまで代理の有効性評価指標に過ぎません。しかし、アクトスの合併症の減少効果は証明できていません(武田薬品工業は心血管疾患の既往のある5000名以上の2型糖尿病患者を対象として実施したProActive試験において、アクトスの有効性の証明に失敗しています)。
その一方で、アクトスには、重大な心毒性リスク、膀胱がんリスク等があります。膀胱がんリスクは、承認時から動物実験で示されており、当会議は、これらのリスクを踏まえ2000年にアクトスの販売中止を求めています。それが、この度、疫学研究でも膀胱がんリスクが示されたのです。安全性と有効性のバランスを失していることはより明確になりました。
そこで、改めて販売の中止を求めた次第です。なお、本問題を討議した厚生労働省の薬事食品衛生審議会医薬品等安全対策調査会における審議は、利益相反の管理という点から問題がありますので、意見書においては、この問題点も指摘しています。
<武田薬品工業からの回答書受領>
なお、当会議の意見書に対し、11月17日付で武田薬品工業株式会社から、回答書が届きました。長文の回答ですが、有効性については、同社がアクトスの有効性を証明するために実施した前記ProActive試験において、「7つの異なるアウトカムを含む主要評価項目についてピオグリタゾン群と対照群を比較すると、統計的有意差が認められなかった」という重大な結果を認めたうえで、他の試験結果をもって弁解を続けるという内容となっています。また、危険性に関しては、膀胱がんリスクについては前記フランスの疫学研究を軽視し、心不全のリスクについては、ProActive試験において、プラセボ群との比較においてアクトス群で有意に増加したという重要な事実を軽視しており不当です。
※ 現在アクトス等を使用中の患者は、独自の判断で中止するのではなく、代替治療薬への移行などを含め、必ず主治医とよく相談して対応することが必要です。
※ 本トピックスは武田薬品工業からの回答書受領に伴い、2011年12月5日に更新しました。