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EMAが2014-16年に承認した抗がん剤のRCTはエビデンスが乏しい

2020-04-20

(キーワード):がん治療薬、バイアスのリスク、欧州医薬品庁 (EMA)、コクランバイアスリスク評価ツール)

 欧州医薬品庁 (EMA) が2014-16年に承認した32の抗がん剤において、承認の根拠と
なった54の重要な研究について、研究デザインの特徴、バイアスのリスク、報告の一貫性などについて、ロンドン経営学政策科学大学院の Huseyin Naci たちが調べた。これまでも抗がん剤は患者の利益となるエビデンスが乏しいと言われていた。Naci たちはこれを明確なデータで示した。※1
以下に論文の概要を紹介する。
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 2014年から2016年の間に、EMAは54の重要な研究に基づいて32の抗がん剤を承認した。54のうち41(76%)は無作為化比較試験(RCT)で、11(20%)は比較薬なしの単群試験、2(4%)は非無作為化試験だった。2以上のRCTで承認された抗がん剤はわずか7だった。オーファン指定されたのは13で条件付き承認は5だった。41のRCTのうち39に利用可能な出版物があり、39の承認の根拠となるRCTのうち全生存(OS)を主要評価項目にしているのは10 (26%) のみであった。21(51%)の主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であった。著者たちはこれらのRCTが厳密にデザインされ実施されたかを、コクラン共同体が開発したバイアスのリスクツール (risk of bias: RoB ※2)を用いて評価した。このツールは5つのバイアスのリスクについて評価し、測定されたアウトカムが過大評価されていないかに焦点を当てている。著者たちはEMAのレビュードキュメントも評価した。

 ほぼ半分のRCT、19/39 (49%)は治療効果が過大に評価されているというバイアスのリスクが高いと判定されていた。バイアス判断のリスクが高かったのは、主として、結果データの欠落(n=10)と結果の測定値(n=7)だった。主要評価項目としてOSを評価したRCTは代理エンドポイントを評価したものよりバイアスのリスクは低かった(20%対55%)32の新薬のうち10 (31%) について規制当局は計画されていない早期終了、疑問のある臨床便益、不適切な比較薬のような問題点を同定した。これらの懸念は出版されたレポートではまれにしか表に出ない。

 著者たちは、がん臨床試験の複雑さゆえに、バイアスリスクはある程度避けられない可能性があるとし、政策立案者、研究者、医師は新たながん治療が患者に真の利益をどの程度もたらすかを慎重に検討する必要があるとしている。
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 当会議の注目情報※3では米国FDAの迅速承認制度によるがん治療薬の承認が代理エンドポイントに依存しており、OSやQOLが不十分にしか検証されていないという報告を取り上げた。EMAでも同じ傾向があり、さらに承認の根拠となるRTCの半数で高いバイアスのリスクが認められた。ピンクシート誌(2019年9月12日 ※4)は、抗がん剤だけではなく、オーファンドラックなどの高価なスペシャリティ医薬品が通常より低いエビデンスで承認されていることは米国の保険者の共通認識ともなっていることを伝えている。

 患者の真の便益を確かなものとするよう新薬に求められるハードルを高くしなければならない。(G.M.)


※4 FDAが承認する新薬のエビデンスが低下している−−保険者が確信
ピンクシート2019年9月12日